Novel

SHORT-SHORT
too fast to give, too slow to notice

「で、アイツなに凹んでんのよ」
「仕方ないですよ、現実とはそういうものです」
「元はといえば2人の所為だろ、あんな小細工して…」
 あの悪夢のバレンタインから1日経った。
 結局、藍羅とリブレが考えたチョコ入れ替え作戦はブラッドにバレてしまい、今年も結局理紀のチョコ1個で終わってしまったという事も白日の下に晒されたというわけだ。
 結果、第12旅団の団長にしてムードメーカーのブラッドはとにかく落ち込み、旅団は一時的ながらも打撃を被った。

too fast to give, too slow to notice

「そもそも原因は何よ」
 机に突っ伏したブラッドを横目で見つつ、傍に立っているヘイズに問い掛けた。
「だからそれは姫さんとリブレがだな…」
「そうじゃなくて、何でこんなにモテないのよ」
 この声を聞いてブラッドが余計凹んだように見えたのは気の所為では無いだろう。
「ンな事聞かれても」
「心当たり有りませんね」
 口々に答えるヘイズとリブレ。そうなのだ、確かにブラッドに本命を渡すような者が居るとは思えないが、だからって義理ですら来ないのは可笑しい。
 理紀がブラッドに渡しているのは分かっている。そして残る旅団員は。
「フローズ、貴女は?」
 近い位置に立って同じくブラッドの様子を見ていた少女に声を掛ける。
「渡してませんよ」
「義理も?」
「ええ」
「どうして?」
 最後の問いにフローズは少し複雑な表情を浮かべ、ブラッドが見ていない事を確認する。
「…だって姫様が渡すと思っていたんですから、私が渡すわけには」
 そう耳打ちされて藍羅の表情は驚愕に満ちた。
「え、えええええええええっ!?」
「姫様声が大きいです」
 大声を上げる藍羅の方に、一瞬だけブラッドが視線を向けたが、すぐにまた元の体制に戻る。
「で、でもそれどういう意味よ」
「そのままの意味ですよ。そもそも姫様はどうなんですか?」
 そう聞かれて少し詰まる。ブラッドの方を確認しつつ小声で言った。
「……ちゃんと渡したわよ」
「直接ですか?」
「箱の中に」
『え?』
 リブレ、ヘイズ、フローズの3人が三者三様の表情を浮かべ驚きの声を上げる。
「で、でもあの箱の中には」
「1個だけ、しかも理紀ののみ」
「だよな」
「可笑しいじゃないですか」
「そうなのよ、だから一体どうしたのかと……」
 複雑な表情を浮かべ頷く藍羅。
「姫様、それは貴女が直接箱の中に?」
「ええ」
「ちゃんとそれは…」
「ブラッドの方に入れたわよ」
 その言葉に固まる一同。
「…姫様、それはつまり」
「だからリブレって書いてある方…に……」
 そう言い終えた藍羅の顔は汗ばんでいた。そして、その傍らで頭を抱えるヘイズ、心底呆れた表情のフローズ、そして何やら複雑な表情を浮かべているリブレが居た。
「……リブレ、お前……」
「ええ、あの大量のチョコレートを食べるつもりなど毛頭になかったんで……」
「ドコ!? っていうか何したの!?」
 ガクガクと藍羅に揺さぶられつつ、リブレは曖昧な表情を浮かべたまま、
「何って、甘党のレイジ君にあげて来……」
 リブレの言葉が終わる前に、藍羅は部屋を飛び出していた。
 
 第12旅団の溜まり場も、ヒヨコが居ないだけで随分と静かだ。
 リブレに要らないから、と押し付けられたチョコレートが机の上に並ぶ。
 確かに甘い物は好きだ、否定はしない。でもコレはあまりに多すぎる。
 迷った挙句選んだのは、シンプルながらも高貴な雰囲気が漂うラッピングが施された箱だった。
 リボンに手に掛けた瞬間。
「レイジ!」
 煩いのがやって来た。今度は一体何をやらせるつもりなのだろうか。
「……何だ?」
 とりあえず声を掛けてみたものの、彼女は何も言わずに歩み寄って来て、
「あああああああっ!」
「煩い、一体何……」
「アンタちゃんと読みなさいよ! リブレ宛って書いてな……って、え?」
 慌てる皇女の前に箱に付いていたカードを突き付ける。
「しっかりリブレ・アナレス様って書いてあるだろ」
 そう、手に持っていたのは紛れも無くリブレに宛てられた物だった。
「あ、え、えと…」
「まさか喧嘩して取り返しに来……」
「ちょっとゴメン!」
 また無視だ。そして、リブレに押し付けられた箱を漁りだす。一体何がしたいのか分からない。
「あ、あったっ!」
 再び大声を上げる。いい加減鬱陶しい。
「…オイ」
「あ、ゴメンレイジ、急いでるから後で!」
 言うだけ言って走り去る皇女。結局、何がしたかったのか分からない。
 別に気にしているわけでもなかったが。
 
「ブラッド!」
 相変わらずブラッドは同じ体制のまま、同じような表情のままただ呆然としていた
 声を掛けても無関心で、チラッと自分の方を向いたかと思えばまた項垂れる。
「ちょっと、元気出しなさいよ!」
「そんなモン無理に決まってるだろー、唯一手に入った戦利品はアイツのだし」
 感情のこもって無い声でそんな台詞を吐かれたところでこっちも何とも言えなくなる。
「コレ!」
 問答無用で手に持っていた箱を押し付けた。
「……あのな、こういうものは当日に……」
「渡したわよ、リブレの箱に紛れ込んでただけで!」
 呆然とした顔。それでも、やっと自分の方を見た。
「……俺に?」
「アンタね、そんな顔止めなさいよ。らしく無いわね」
「つまり、コレって俺への愛の告は……」
「ンなワケないでしょうが!」
 思わず手が出るものの、ブラッドに止められる。
「人が凹んでる時にビンタはないでしょ、ビンタは」
「アンタの言動が悪いのよ……ってアンタ!」
「ありがとさん、ありがたく受け取っておくぜ」
「だったらその手をどけなさいよ!」
 頭をグシャグシャと撫でられる。
 悪い気はしないけど良い気もしない。
 向こうでリブレ達がホッとした表情を見せてる。
 ……まぁ、万事オッケー?

2006/02/17

と、いうワケで後日談。バレンタインネタの続きです。
メセ中に勢いで続き書いてやるぜ!と宣言してしまったものの、何をどうしようか迷ったり。
案外抜けてる団員ズあーんど皇女。
結局レイジを出した意味があったんだかどうなんだか、まぁ良いや((