No. | キャラ | 台詞、状況 |
周囲は変わり映えする事なく、延々とビルばかりの殺風景な景色が続く。ネオンの残骸と廃棄された鉄骨は、荒廃したスラムにも有り触れていた。照明は足下を照らして、照らされた雪は体温を奪って行く。 人目に触れれば首を傾げられる姿も、スラムにあっては誰かが声をかけて来ることもなかった。全身に絡みつく悪意の視線も今となっては気にならなくなった。 細い裏道に一歩踏み入れると、左右両の物陰から声を潜めて住人は互いに噂し合う。一方は若い女と中年女性、もう一方はホームレスと取れる男達。 |
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001 | ロマ |
「……あの白いの、アルフィタの魔人がやってきた……中央府も、また物騒になるね」 |
002 | 婦人 |
「今更何言ってんだい。ここは元から物騒なもんだよ。あたしら流れの者には安息の地なんてないものさ」 |
003 | ロマ |
「ブライガに続いてアルフィタまで中央の支配下だ。どこにいても迫害される猫は、どこに逃げればいいんだ。余計な事をしてくれたものだよ、魔人も、レジスタンスも」 |
004 | 婦人 |
「だったらここで始末するかい?」 |
005 | ロマ |
「冗談はよしてくれ。身が持たないよ」 |
006 | 婦人 |
「ところでお前さん、南の |
ロマの女は苦笑交じりに肩を竦め、古びたタロットカードに手を伸ばした。 全身茶系の服に埋もれて男は銃を握り直す。ボロついた天幕の隙間から、冷たい風が吹き入る。 |
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007 | 密猟者 |
「また見慣れない奴だ。こちらは銃を持っているな。どうする?」 |
008 | 売人 |
「どうするも何も、追い払わなきゃ居座られる。追いやらなかった方が悪い。それがここのルールだろ」 |
009 | 密猟者 |
「……そうだな、廃倉庫に居座ってる皇女なんてのも、それが原因だったな」 |
010 | 売人 |
「こっちを片付けて、次はあいつらだ。それだけだろ」 |
011 | 密猟者 |
「銃とナイフを持て、反撃されては敵わんからな」 |
012 | 売人 |
「分かってる。いちいちうるせェよ、オッサン」 |
013 | 密猟者 |
「お前は後ろに回りこんでくれ。前方は何とかしよう」 |
長銃を手に、男は帽子を目深に被って立ち上がった。 複数の足音が近付く。歩む足を止め、鐵零仕は何の感情の色もない無表情で、静かに振り返った。 |
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014 | ジャスカ |
(タイトルコール) GUNBLAZE第二章 GUNBURST、ACT2「 |
静寂を纏っていた空気が震え、赤い防寒ジャケットを羽織った少年――ジャスカは立ち止って尻尾を泳がせた。人影のない暗い路地に、人の気配は感じられない。 周囲を見回して首を傾げる。 |
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015 | ジャスカ |
「……なんだろう、縄張り争いかな……でもここの連中、放浪者が溜まってるだけだよなあ」 |
掃き溜めにも似た場所で、個人の主張を貫こうとする人間はそう多くない。争いが起きるのは、いつだって外部の第三者の介入があった時だ。 とは、皇女藍羅の受け売りではあるが。そもそも彼女が何故そんな城下に詳しいのか、気にし始めたらきりがない。 |
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016 | ジャスカ |
「まったく、姫様も人遣い荒いよー。猫は寒いの苦手なのに……どこにいるのかも分からない人間、どうやって探せっていうんだよー。うう、死臭が酷いし、早く帰りたいなホント」 |
身を丸めて弱音を吐く。 |
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017 | 密猟者 |
「誰かそこにいるのか!」 |
曲がり角の辺りで、住人のものと思われる声を聞き、ジャスカは咄嗟に物陰に隠れた。勢いで側にあった空き缶を蹴った。 |
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018 | ジャスカ |
「うわ、あぶっ」 |
019 | 売人 |
「空耳だよオッサン。それよりもこっちだ。折角の獲物、取り逃がしたら損ってもんだ」 |
020 | レイジ |
「……何の用だ」 |
突然銃口を向けてきた男らを一瞥し、溜め息をついた。謂れのない扱いを受ける事に、疑問を持つのは諦めた。アルフィタでは騒ぎの渦中にいたためか、悪者の扱いだ。噂がレブナンスに及んでいても何ら不思議に思わない。 狩猟が本来の生業らしい男が、苦笑じみた笑みを浮かべる。 |
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021 | 密猟者 |
「見慣れない顔だ。ここの者ではないな、どこの所属だい?」 |
022 | レイジ |
「答える義務はない」 |
023 | 密猟者 |
「余所者が勝手に居着いては、住人側としても困るんだよ」 |
024 | レイジ |
「なら早々に出て行く、それで良いだろう」 |
前方の男は訝った様子で暫し黙り、背後に詰め寄っていた男がナイフをちらつかせた。 |
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025 | 売人 |
「残念ながらそうはいかない。お前はここじゃ不吉の象徴なんだよ!」 |
振りかぶる。 戦闘慣れしていない無茶苦茶な振り回し方のためか、避けるのに苦労しなかった。心底悔しそうに男は吐き捨てた。 |
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026 | 売人 |
「くそ、ちょこまかと」 |
027 | レイジ |
「殺すつもりで来るなら、俺も手加減できない」 |
028 | 売人 |
「うるせえ! テメェみたいなヤツァな、ここでくたばっちまいな!」 |
029 | レイジ |
「……仕方ない、気が乗らないが」 |
長銃の弾が足下を掠る。バランスを崩して数歩後退った。好機とばかりに踏み込んでくる若い男に向けて、引き金を引いた。 |
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030 | 密猟者 |
「後ろががら空きだ!」 |
031 | レイジ |
「……っ」 |
背後から灰布を掴まれ、右腕を絡め取られる。身動きできずにそのまま押さえ込まれた。凍った地面に叩きつけられた肩が痛む。露呈した白髪を見てか、男は絶句した。 辛うじて空いている左腕に銃を取り、男に突きつける。目を丸く見開いたまま、震えた声音で呟いた。 |
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032 | 密猟者 |
「赤い目……? 赤い目なんて存在するのか、薄気味悪いな……お前はまさか、本当に……」 |
033 | 売人 |
「何やってんだ、早く撃ち殺せ!」 |
034 | レイジ |
「それを返せ、さもなければ――」 |
035 | 売人 |
「さもなければ、か。なんだァ? そんなに大事なモンなのか、単なる布切れが。――あァ、もしかしてその頭、隠すための物ってェのか?」 |
嘲笑じみた笑みを浮かべ、男の内若い方は薬臭を漂わせながら、ナイフを宛がった。首筋に鍔元が食い込む。 |
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036 | 売人 |
「アンタ、自分がいる状況が分かってないみたいだな。数の上ではこっちのが有利なんだぜ?」 |
037 | レイジ |
「即刻、その口閉じるか失せるかしろ。目障りだ」 |
顔を上げ、若い男は不快を露わにして叫ぶ。 |
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038 | 売人 |
「魔人如きが命令すんじゃねえ! 安心しな、すぐに口が利けないようにその喉、掻っ切ってやる!」 |
039 | レイジ |
「命令じゃない、警告だ」 |
痛む首筋と相変わらずの咆哮に、警告は聞き入れられなかったものとして、躊躇いなく引き金を絞った。男の頬を掠って弾丸は宙を舞う。呆然としている猟師姿の男の手を振り払い、レイジは立ち上がった。 尻餅をつき、手をついてガラの悪い男が怒声を浴びせる。 |
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040 | 売人 |
「ッてェ……! てめッ、よくも」 |
041 | ジャスカ |
「うっわ、あぶなっ、もうちょっとで巻き添え……」 |
042 | 売人 |
「あァ? 何だお前」 |
043 | ジャスカ |
「……えっ、ちょ、ちょっと、まさか」 |
ドラム缶の影で蹲っていた黒い蛮猫の少年が、慌てふためいた状態のまま男を見返した。男は極悪の笑みに染まりながら、迷わずジャスカの肩を掴んでナイフを突きつける。 影に気配があるのは気がついていたが、そこまで鈍臭いとは思っていなかった。思わず肩を竦める。男は高笑いし、向き直る。 |
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044 | 売人 |
「これが目に入らねーかぁ! 下手に動けばこいつがどうなっても知らんぞ」 |
045 | ジャスカ |
「何でこんな事にー!」 |
046 | レイジ |
「……浅ましい」 |
見知らぬ蛮猫相手に同情するつもりは毛頭ない。不運な猫が一匹混じるだけだ。銃口を向け、照準を定める。 男は青い顔で少年と顔を見合わせた。 |
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047 | 売人 |
「げっ、マジ撃つ気だ! おい坊主、お前そんな簡単に殺されていいのかよ!?」 |
048 | ジャスカ |
「人質にしておいて何言ってんだお前! 接点ない人間相手に誰が躊躇うんだよ! あー、これで僕も終わりだ~」 |
弱気な発言をしながら少年は悲鳴にも似た声を上げる。 手の甲に狙いを定めて撃つと、反撃する事なく弾丸は命中した。弾き飛ばされたナイフがタイル張りの地面で跳ね返り、男は悲鳴を上げる。 |
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049 | 売人 |
「ぁあああ!! ……テメェエ!」 |
050 | レイジ |
「警告通りだ」 |
051 | ジャスカ |
「ああっ、今のうちっ。助かりました。ああ、これさっき奪われてたマフラ……え?」 |
地面に落ちた灰布を手に、ジャスカが駆け寄る。 足下で変わらず何かに怯えているような狩猟者から数歩離れ、目障りに感じる猫の額に銃口を突きつけた。驚いた様子で再び手にした物を落とし、少年はこちらを見上げている。 |
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052 | レイジ |
「失せろと言ったはずだ」 |
053 | ジャスカ |
「え、僕も!? ……あ。アンタ、もしかして」 |
少年ジャスカの言葉が終わらぬ内に、灰布を拾い上げ、場を去ろうと踵を返す。 |
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054 | ジャスカ |
「その白い頭、赤い目、もしかして、鐵……零仕」 |
055 | レイジ |
「さあな、そんな名前は知らない」 |
056 | ジャスカ |
「ちょっと待ってくれ! お前、鐵零仕だろ、ずっと探してたんだ! 頼みたい事があって」 |
057 | レイジ |
「……断る」 |
058 | ジャスカ |
「待てってば、話を聞いてくれたっていいだろ!」 |
追ってくる子供を振り切ろうと、先を急いだ。嫌な予感がする。 内心では、少年が己の名前を知っていた事に驚きを禁じ得なかった。名乗ったのはたった一度きり。アルフィタの暴動の際、レブナンス軍のブラッド・バーン・ブレイズに対してだけだ。 それを知っているとなれば。 |
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059 | レイジ |
「名前……」 |
060 | ジャスカ |
「え、なに? もっかいオネガイシマス」 |
061 | レイジ |
「名前、どこで聞いた?」 |
062 | ジャスカ |
「それは切り札だから言えない」 |
目をぱちくりとさせながら、少年はにやりと笑んだ。 妙に腹が立って、銃をその額に傾ける。 |
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063 | ジャスカ |
「わァアア、タンマ! その銃はなに? まったくもー、命が幾つあっても足りないよ……あ、はい、すんません! 答えます!」 |
064 | レイジ |
「手っ取り早く答えろ」 |
065 | ジャスカ |
「僕はジャスカ。レブナンスの第一皇女の……って、鐵?」 |
答えている間にでも振り切ろうと、来た道を引き返そうとした途端、急に意識が遠退く。 |
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066 | レイジ |
「……くそ、またか……」 |
067 | ジャスカ |
「ちょっと、大丈夫か、鐵!」 |
ジャスカの呼びかけを最後に、意識は冷たい雪のカーペットに沈んだ。 |
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068 | 藍羅 |
「……何やってんの、ジャスカ」 |
呆れた口調で、訝って藍羅は告げる。彼女の従者は、気を失っている黒コートの男を引き摺って、全身で呼吸している。 |
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069 | 藍羅 |
「あ、白い髪にうちの軍服に似た黒コート。ブラッドの言ってた特徴そっくりだわ」 |
070 | ジャスカ |
「えっ、情報源あの男ですか!? し、信じなければ良かった。どうしようもないのだったら、どうするんですかー!」 |
071 | 藍羅 |
「お黙んなさい。今はそういう事言ってられる余裕なんてないのよ。とにかく運び込むしかないわね……ジャスカ、手伝いなさい」 |
舌を出して猫は嫌悪を露わにする。 |
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072 | ジャスカ |
「姫様が考えてる事、僕にはもうさっぱり……」 |
073 | 藍羅 |
「グチグチ言わない、とっとと手伝う! あたしに力仕事させる気?」 |
074 | ジャスカ |
「猫遣い荒いんだから、もー」 |
芯まで冷え切っているだろう体は、気を失っているだけに重たい。自分よりも体重がある分、廃倉庫に連れ込むのに苦労した。 |
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075 | ジャスカ |
「それにしても姫様、本気ですか。なんだか用意の良い行き倒れで、僕には信用できませんー」 |
076 | 藍羅 |
「鐵零仕ねえ……違う名前だった気がするけど。コードは確か逆悪……悪ねえ、まさか用意されてたなんて事は……」 |
077 | ジャスカ |
「ぜッッたい危ないですよ姫様、まだあのふざけたトリプルBのがマシってもんです」 |
078 | 藍羅 |
「そう? あたしにはそうは見えないんだけど」 |
079 | ジャスカ |
「外見と中身が、全ッ然噛み合わない人ばっかり見てるからかな、この人……」 |
ジャスカがぼそりと独り言を呟くと、地獄耳はすかさずそれを捕えた。 |
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080 | 藍羅 |
「なんか言った?」 |
081 | ジャスカ |
「いーえ、何も言ってません! ……あ、起きた」 |
ぼんやりとした頭で周囲を見回し、レイジは歎息した。未だ動くに至らないが、聴覚は麻痺していない。薄暗い寂れた場所で寝かされていたようだ、ランタン一つ木箱の上に置かれている以外、ステンレスの棚と麻袋しか見当たらない。 足下を冷えた風が通り抜ける。 |
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082 | レイジ |
「ここは……」 |
083 | 藍羅 |
「南地下スラム街の廃倉庫。コート勝手に脱がせたけど文句はなしね、毛布なんてなかったから」 |
084 | レイジ |
「……? 俺は」 |
085 | 藍羅 |
「行き倒れてたのを、そこのジャスカってのが拾ったのよ」 |
086 | レイジ |
「銃は」 |
087 | ジャスカ |
「あ、ああそっちの棚の上」 |
墨の棚を指差して、ジャスカは再び視線を逸らした。 寝かされていた場所を見る。網目の粗い麻袋が積み上げられているが、独特の薬品臭を漂わせている。 |
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088 | 藍羅 |
「あ、そうそう、あともう一個。ちょっと失礼、頭下げて」 |
藍羅が身を乗り出し、膝の上に乗りかかる。その様子を見て、ジャスカは悲鳴じみた叫びを上げる。 |
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089 | ジャスカ |
「ちょっと姫様!? なんて事を! 仮にも一国の皇女が何てーはしたない!」 |
090 | レイジ |
「くそ、離せ、邪魔だ」 |
091 | 藍羅 |
「お黙り、ジャスカ! アンタもアンタよ大人しくしててちょーだい。ええっと……あったあった、大人しくしてて」 |
首後部に痛みを感じて身を起こそうとするが、藍羅にがっちりと固められていて身動き一つ取れない。 |
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092 | ジャスカ |
「姫様? 何ですか、その怪しげな薬」 |
093 | レイジ |
「……ッお前……何を」 |
注射器のような物を手に、藍羅はあっけらかんと笑う。 |
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094 | 藍羅 |
「倦怠感、眩暈、吐き気、頭痛に関節痛――」 |
095 | ジャスカ |
「姫様……、それは風邪では……」 |
096 | 藍羅 |
「ないわね? ないわよね? なくなってるはずよね? そんな顔しなくても、単なる栄養剤よ」 |
呆れた声音で唸るジャスカを押し退けて、藍羅は肩を竦める。その素振りが、彼女の古馴染みであるブラッドの影響であるなどと、レイジは知る由もない。 痛覚の残る首を抑えて頭を下げる。 |
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097 | レイジ |
「……正直に答えろ、何をした」 |
098 | 藍羅 |
「人聞き悪いわね。ブラッドの情報網に引っかかった時から、衰弱してるんじゃないかと思って、人目を盗んで特注を持ってきてあげた、っていうのに」 |
099 | レイジ |
「ブラッド……」 |
100 | 藍羅 |
「ジャスカの話じゃ、スラムのヨボヨボの連中にまで押さえ込まれるなんて、相当食事睡眠取ってないようだし」 |
101 | レイジ |
「――ブラッド・バーン・ブレイズ」 |
102 | 藍羅 |
「あら、知り合い? レブナンスの軍人よ。って言っても、軍人の名前なんてフツー、一般にはそんなに知られたものじゃないかもね」 |
反芻する。耳馴染みのある名前だ。彼女が親しげに話す様子から、近しい人間である事を示唆している。 藍羅は数拍置いて続けた。 |
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103 | 藍羅 |
「あたしは藍羅・レブナンス。この国の第一皇女。まあ、勘当されたばかりだけど」 |
104 | レイジ |
「皇女が何故こんなところでフラついている?」 |
105 | ジャスカ |
「お前、姫様に助けられた身なんだぞ、そこんとこ分かってるのか?」 |
106 | レイジ |
「それがどうした。頼んだ覚えはない」 |
詰まる猫を尻目に、それまで掛けられていたコートを肩に掛けた。壁に寄りかかるとその硬度と温度が直に伝わる。 |
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107 | レイジ |
「要件は何だ」 |
108 | 藍羅 |
「物分りが良くて助かるわ」 |
憎悪の根源であるロイヤルを目の前に、冷静にいられるはずもない。撃とうと思えばいつでも撃てる。貴重な情報源はあるに越した事はないが。 藍羅は得意げに告げた。 |
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109 | 藍羅 |
「あたしは今の制度に不満を持ってる。でも真っ当な方法じゃ、上には近づけない。国王がそうしたからよ」 |
110 | 藍羅 |
「あたしが王になったら、アンタにまともな生活環境と戸籍をあげるって保障する。その代わり、国王の暗殺に協力して貰いたい。簡単な話でしょ?」 |
111 | レイジ |
「くだらない。親子喧嘩なら勝手に……」 |
112 | 藍羅 |
「あたしもそう思うんだけど、なかなかね。――知ってる? 北大陸のほとんどは、今やレブナンスの植民地。前線にいるのはアンタみたいな『武器』よ」 |
113 | レイジ |
「……それがどうした、俺には関係ない」 |
114 | 藍羅 |
「国王らに『武器』だって断言されて、人間じゃないって否定されてるのに、関係ないと言える?」 |
115 | ジャスカ |
「姫様、それはちょっと、神経逆撫でするだけじゃ……」 |
ジャスカの言い分は尤もだと思うが、彼にだけは何故か言われたくない気もした。 これは彼女のやり方だ。簡単に乗せられるつもりはない。依頼自体も厄介だ。捨て駒にされる可能性も無い訳ではない。どこまで信用できるか、さえ計りかねる。 だが。 |
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116 | レイジ |
「一晩寄越せ、考えてやっても良い」 |
117 | ジャスカ |
「……え、ずいぶんあっさり」 |
118 | レイジ |
「まだ返答を決めた訳じゃない」 |
119 | ジャスカ |
「あ、そか。安心しちゃいけないか」 |
胸を撫で下ろす猫に向け、藍羅を指差す。 |
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120 | レイジ |
「それよりも、コレをどかして貰えないか。いい加減重くて敵わない」 |
121 | 藍羅 |
「あああ、アンタ! 失礼ね!」 |
慌てて飛び退いて、藍羅は叫んだ。 |
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122 | 藍羅 |
「もー! ロイヤルにも御せないってどういう事ー!!」 |