GUNBLAZE

ACT05 Anthem Catharsis [ blaze_05 ]
No. キャラ 台詞、状況
001 サージェ

「調子はどうだ? 視力が大分落ちてるようだが、四肢の感覚は?」

002 レイジ

「問題ない、戦闘にさえ関わらなければ持つだろう。無理な話ではあるがな」

 防寒コートを着込み、レイジは嘆息した。視聴覚から痛覚に至るまで、全ての感覚が鈍い。今となっては寒さもあまり感じないが、周囲が文句をつけるため着込むしかない。

 繰り返されるサージェの問いを受け流しながら、再び目を瞑る。

003 サージェ

「本来、長期間動かすことを想定していなかったからな……研究チームこそ壊滅したが、何か方法を考えてみよう」

004 レイジ

「藍羅・レブナンスは戦を好まない、俺はこの先使われないだろう。使い捨ての道具のように扱えば暫く持つ。必要ない」

005 サージェ

「お前な、仮にも遺伝子提供者である私の前で、そんな事を言うのか」

005+ サージェ

「使い捨てだと? 確かにあちこちケチってる姫君なら、躊躇って手をつけないだろうが……耳障りが悪いぞレイジ」

006 レイジ

「それこそお前ら学者の都合だ、俺には関係がない」

007 サージェ

「……あ、ブラッド、もう動いても良いのか」

 いつも通りの白い軍服を羽織った男が視界の隅に映る。並々と注がれたコーヒーが溢れる。男は笑ってそれを差し出した。

008 ブラッド

「おう。二人とも寒くねェか? リキにコーヒー淹れて貰ったンだけど」

009 レイジ

「貴様は相変わらずだな」

010 ブラッド

「んぁ、何がだよ。おっと、姐さんこれ熱いから気をつけろよ? ほれ、レイジにも」

011 サージェ

「ああ、悪いな。アルフロストの方はどうなんだ? よく大人しくなったな」

012 ブラッド

「一つ姐さんに言うとしたら、『忘れンな』かな。憎んでももう遅いし、不便してないからな」

013 サージェ

「……そうか、本当に悪い事をしたな。上に言われるがまま馬鹿な真似をした私を、許してくれと言えた立場じゃないが」

014 ブラッド

「頭では分かってても、認めるのは難しいもんだ」

015 レイジ

「随分他人事のように言うんだな」

016 ブラッド

「俺は他人事みたいな立ち位置だったからな、仕方ねーべ。にしても、奇妙な組み合わせだなァ。ナニコレ、年近いくせに遺伝情報的には親子同じかよ」

 壁に寄りかかり、ブラッドは興味深そうに視線を投げかける。レイジにはそれが不愉快で仕方がなかった。

 サージェはわなわなと震える腕を押さえ込み、テーブルの上にコーヒーの入ったマグカップを置く。

017 サージェ

「第一な、何故この期に及んで私が軍に奉仕せねばならん? 誰の所為だと思ってるんだ、このヒヨコ頭! 一度その頭赤く染めてやろうか!」

018 ブラッド

「怒る事じゃねェだろー、今までした事の報いでもあンだろ? そうそう、そういえば、人が猫舌用に温いの貰って来てやったのに、礼もなしじゃねェか!」

019 サージェ

「煩い! おい、レイジも何か言ってやってくれ、この馬鹿に!」

020 レイジ

「嫌だ。低次元だ、付き合いきれん」

021 ブラッド

「あ、レイジにまで馬鹿にされた気がする。本当に変なトコそっくりで腹が立つな、この親子!」

022 レイジ

「実際馬鹿にしたんだ、諦めろ」

023 サージェ

「お前のどこが、馬鹿以外のものになり得るんだ。言ってみろ」

024 ブラッド

「あーもう、なんだこいつら。ダブルで攻撃しかけてきやがる。まあそんなこたァいい。レイジ、お前正式に旅団の一員にならないか?」

025 タイトルコール

(タイトルコール)

 GUNBLAZE the 3rd chapter

 GUNBLAZE LAST ACT - Anthem Catharsis

026 藍羅

「ジャスカ、一名受け入れの準備は良い?」

027 ジャスカ

「ええもうバッチリ、超イケますよ」

028 藍羅

「オッケー、逃げようものなら首根っこ捕まえて、無理矢理放り込むまでよ」

029 ジャスカ

「お任せ下さい、今回は旅団の協力ありまくりですからね! 僕がスベってもフォローたっぷり!」

 少年は罠を仕掛けながら嬉しそうに答える。傍らで微笑ましく様子を見守りながら、リブレは書類を机へ放った。

030 リブレ

「まあジャスカ君のフォローなんて話は聞いてませんけど、確かに良い人材は欲しいですね。そのためなら協力はしますが」

031 ジャスカ

「うわ慰めてもくんないんだ、この鬼畜」

032 リブレ

「利害一致って言葉、知ってます?」

033 クイーヴ

「当人であるレイジの返答は、どうなってんのさ。勝手な事したら、物凄い怒るぞアイツ」

034 理紀

「それ以前にどっか行ったまま、戻ってきてないッス。団長もコーヒー持って医務室行っちゃった」

 周囲を見回して、理紀が首をかしげた。隣でヌクリアが満面の笑みを浮かべながら菓子を頬張る。

035 ヌクリア

「ダンチョ、げんきになったね。ヌクあんしんした」

036 ヘイズ

「アルフロストはよく落ち着いたな、あんだけ騒がしかったのに」

037 フローズ

「ああそれは多分。故郷がなくなって帰る場所がなくなったのに、誰も認めてくれないから居場所がない。寂しかったんじゃないかな、兄は」

038 クイーヴ

「なんて都合の良さだ、単純じゃないか」

039 フローズ

「女医が言ってたろう、コインの表裏なんだって。気になるなら団長本人に聞けばいいじゃないか」

040 リブレ

「最近団長がちょっと子供じみてる気がするのは、多分その所為なんでしょうけど……ある意味凄い組み合わせですよね……何もなければ良いんですけど」

041 ヘイズ

「何もなければ、っていえば。レイジはどうなんだ、そこんとこ。クイーヴがここ最近気にしてたろ、様子がおかしいって」

042 クイーヴ

「生き急いでる気がする――っていうのはちょっと違うな。皆がこうやってワイワイ話してるだろ? それを遠くで自分は関係ない、みたいに見てるんだよ」

 身振り手振り交えながらクイーヴは懸命に説明する。新しい菓子の袋を開けながら、ヌクリアが顔を覗かせた。

043 ヌクリア

「レイジ、いつもそうだよ。でもね、ちょっとなかまはずれみたいにみえるよ」

044 クイーヴ

「それが自発的だから手に負えないんだよ。ここじゃ誰も外見気にしないから、気に病む必要ないと思ったんだけど、あれじゃあな」

045 藍羅

「レイジらしいっていうか、何ていうか――なんて言ってたらブラッドだけ戻ってきたけど」

046 ブラッド

「お前ら何全員でサボってんだ、姫さんもジジイどもが呼んでたぞ。全員罰として見回りけってーい」

047 リブレ

「巡回じゃ罰にならないじゃないですか」

048 理紀

「確かに日課ですしね。よーし行って来よーっと」

049 クイーヴ

「団長、レイジはどこに?」

050 ブラッド

「俺もすぐ見回りに出るから外で待たせてる。なんだその顔、辛気臭い奴だな」

 正直な事に、少年は言葉に詰まった。

051 クイーヴ

「うっ、別に何でもないんだけどさ。最近おかしいなって」

052 フローズ

「クイーヴ、置いて行くぞ。早くしろ」

053 藍羅

「皆なんだかんだ言って心配してるみたいねえ。単なる寄せ集めでも、死線くぐれば危機を共有した仲間になるから、ってとこかしら」

054 ブラッド

「え、あ、それに俺は含まれてる?」

055 藍羅

「アンタは筆頭でしょ? 当然含まれてると思うけど。何その嬉しそうな顔」

056 ブラッド

「いいや別に? よしじゃあ、俺もちょっと出てくるわ。レイジ借りるぞ」

057 藍羅

「何も変わったのは、レイジだけじゃないのにねえ。自覚ないのかしら」

 腕を組み、藍羅は肩を竦めた。

 ホバーの座席に腰掛け、空を見上げる。鉄筋で囲まれた灰色の空は相変わらず無機質だが、今は不思議と心地よい物のように感じられた。冷たい空気に目を瞑り、レイジは全身の力を抜く。

058 レイジ

「38度を超えると、平衡感覚薄れるんだな」

059 ブラッド

「あ、何? 何か言ったか?」

060 レイジ

「空耳だ、別にお前に用はない」

061 ブラッド

「……どうしようマジでレイジの様子がおかしいぞ、俺が視界にいるのにちょっと嬉しそうにしてるレイジとか、天変地異が起きない限り」

062 レイジ

「それは貴様の気の迷いだ」

063 ブラッド

「ああそうかい、それならそれでいいわい。で、旅団加入の返答は?」

064 レイジ

「前線を張ってやる。俺は元があるお前と違う、人型の武器だ。戦場にしか存在理由を見出せない」

 何気なく答えた言葉に、ブラッドは黙り込んだ。

 自分とよく似た、正反対の男は今となっては、前程憎らしく感じない。根底を同じくしている所為か、それとも自分自身の気が変わっただけなのか、それは己にも分からない。ただ一つ分かったのは、アルフロストの言動が、あまりにも自分と重なる事だ。

 ブラッドは苦笑した。

065 ブラッド

「いやな選択肢を選ぶんだなあ、お前」

066 レイジ

「アルフロストの醜態を見て思ったのは、俺もああなってたかもしれん、という事だ。目を逸らしたくないだけだな」

067 ブラッド

「素直で宜しい、宜しいが重たいぞレイジ。あとお前熱あんじゃねェ?」

068 レイジ

「さあな、さっきから周りが歪んで見えるんだが」

069 ブラッド

「そりゃお前の感覚の問題だ。って、ちょっと待て。ホバー止めるからじっとしてろ、畜生冗談のつもりで言ったのに」

 慌ててホバーを停止したブラッドが顔を覗き込む。正直鬱陶しいが、構っていられる程の余裕はレイジにはなかった。

 頭上の空を白い影が遮る。

070 レイジ

「やめろ冷たい、触るな」

071 ブラッド

「げっ、マジ熱あるじゃねェか。何でこんなに動けるんだお前」

072 理紀

『団長ー、副団長が強盗捕まえたー! この場合どこに連行したらいいッスかー』

073 ヌクリア

『ダンチョ、ヌクがつかまえたー』

 無線越しに注文が増え、ブラッドは慌てながら応対する。

074 ブラッド

「公安に突き出せ! ええいもう、どいつもこいつもタイミングってモンを知らねェな、こき使ってくれるなよ! レイジ、一旦戻るぞ」

075 レイジ

「いい、俺なら問題ない」

076 ブラッド

「うわうわうわ、その言動からして支障ありまくりだ馬鹿、気がつけ」

077 レイジ

せわしないな、問題ないと言っている」

078 ブラッド

「お前今回組んだのが俺で良かったな。クイーヴ辺りじゃ運べずに放置だぞ。……おい、何か言ったらどうだ。お前ただでさえ喋らねンだから、心配になるだろ」

 レイジは返事しない。口を開けば疲弊する。再びエンジンをかけるブラッドの様子が、いつになく慌しい。

079 ブラッド

「あっ、もしかして寝たのかよ。余計な気を使わせやがって……本当に大丈夫だろうな」

080 レイジ

「お前、声が遠い」

081 ブラッド

「そりゃお前の熱の所為だ」

082 レイジ

「……悪くないな、こういうのも」

083 ブラッド

「そうかい、それじゃ後で俺に感謝すんだな。楽しみにしてる」

 自嘲気味に呟いたレイジに追い討ちをかけ、ブラッドは苦笑した。

 調子が狂う。体重を預け、目を瞑る。

084 レイジ

「少し、眠る。ホバー揺らすなよ」

085 ブラッド

「注文の多い奴だな、ホント」

(cast credit)

(ED:true)

086 レイジ

 最後に見た景色は。

 最初に見た時と同じ、黒い世界を染める、白い雪だった。