No. | キャラ | 台詞、状況 |
001 | サージェ |
「調子はどうだ? 視力が大分落ちてるようだが、四肢の感覚は?」 |
002 | レイジ |
「問題ない、戦闘にさえ関わらなければ持つだろう。無理な話ではあるがな」 |
防寒コートを着込み、レイジは嘆息した。視聴覚から痛覚に至るまで、全ての感覚が鈍い。今となっては寒さもあまり感じないが、周囲が文句をつけるため着込むしかない。 繰り返されるサージェの問いを受け流しながら、再び目を瞑る。 |
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003 | サージェ |
「本来、長期間動かすことを想定していなかったからな……研究チームこそ壊滅したが、何か方法を考えてみよう」 |
004 | レイジ |
「藍羅・レブナンスは戦を好まない、俺はこの先使われないだろう。使い捨ての道具のように扱えば暫く持つ。必要ない」 |
005 | サージェ |
「お前な、仮にも遺伝子提供者である私の前で、そんな事を言うのか」 |
005+ | サージェ |
「使い捨てだと? 確かにあちこちケチってる姫君なら、躊躇って手をつけないだろうが……耳障りが悪いぞレイジ」 |
006 | レイジ |
「それこそお前ら学者の都合だ、俺には関係がない」 |
007 | サージェ |
「……あ、ブラッド、もう動いても良いのか」 |
いつも通りの白い軍服を羽織った男が視界の隅に映る。並々と注がれたコーヒーが溢れる。男は笑ってそれを差し出した。 |
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008 | ブラッド |
「おう。二人とも寒くねェか? リキにコーヒー淹れて貰ったンだけど」 |
009 | レイジ |
「貴様は相変わらずだな」 |
010 | ブラッド |
「んぁ、何がだよ。おっと、姐さんこれ熱いから気をつけろよ? ほれ、レイジにも」 |
011 | サージェ |
「ああ、悪いな。アルフロストの方はどうなんだ? よく大人しくなったな」 |
012 | ブラッド |
「一つ姐さんに言うとしたら、『忘れンな』かな。憎んでももう遅いし、不便してないからな」 |
013 | サージェ |
「……そうか、本当に悪い事をしたな。上に言われるがまま馬鹿な真似をした私を、許してくれと言えた立場じゃないが」 |
014 | ブラッド |
「頭では分かってても、認めるのは難しいもんだ」 |
015 | レイジ |
「随分他人事のように言うんだな」 |
016 | ブラッド |
「俺は他人事みたいな立ち位置だったからな、仕方ねーべ。にしても、奇妙な組み合わせだなァ。ナニコレ、年近いくせに遺伝情報的には親子同じかよ」 |
壁に寄りかかり、ブラッドは興味深そうに視線を投げかける。レイジにはそれが不愉快で仕方がなかった。 サージェはわなわなと震える腕を押さえ込み、テーブルの上にコーヒーの入ったマグカップを置く。 |
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017 | サージェ |
「第一な、何故この期に及んで私が軍に奉仕せねばならん? 誰の所為だと思ってるんだ、このヒヨコ頭! 一度その頭赤く染めてやろうか!」 |
018 | ブラッド |
「怒る事じゃねェだろー、今までした事の報いでもあンだろ? そうそう、そういえば、人が猫舌用に温いの貰って来てやったのに、礼もなしじゃねェか!」 |
019 | サージェ |
「煩い! おい、レイジも何か言ってやってくれ、この馬鹿に!」 |
020 | レイジ |
「嫌だ。低次元だ、付き合いきれん」 |
021 | ブラッド |
「あ、レイジにまで馬鹿にされた気がする。本当に変なトコそっくりで腹が立つな、この親子!」 |
022 | レイジ |
「実際馬鹿にしたんだ、諦めろ」 |
023 | サージェ |
「お前のどこが、馬鹿以外のものになり得るんだ。言ってみろ」 |
024 | ブラッド |
「あーもう、なんだこいつら。ダブルで攻撃しかけてきやがる。まあそんなこたァいい。レイジ、お前正式に旅団の一員にならないか?」 |
025 | タイトルコール |
(タイトルコール) GUNBLAZE the 3rd chapter GUNBLAZE LAST ACT - Anthem Catharsis |
026 | 藍羅 |
「ジャスカ、一名受け入れの準備は良い?」 |
027 | ジャスカ |
「ええもうバッチリ、超イケますよ」 |
028 | 藍羅 |
「オッケー、逃げようものなら首根っこ捕まえて、無理矢理放り込むまでよ」 |
029 | ジャスカ |
「お任せ下さい、今回は旅団の協力ありまくりですからね! 僕がスベってもフォローたっぷり!」 |
少年は罠を仕掛けながら嬉しそうに答える。傍らで微笑ましく様子を見守りながら、リブレは書類を机へ放った。 |
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030 | リブレ |
「まあジャスカ君のフォローなんて話は聞いてませんけど、確かに良い人材は欲しいですね。そのためなら協力はしますが」 |
031 | ジャスカ |
「うわ慰めてもくんないんだ、この鬼畜」 |
032 | リブレ |
「利害一致って言葉、知ってます?」 |
033 | クイーヴ |
「当人であるレイジの返答は、どうなってんのさ。勝手な事したら、物凄い怒るぞアイツ」 |
034 | 理紀 |
「それ以前にどっか行ったまま、戻ってきてないッス。団長もコーヒー持って医務室行っちゃった」 |
周囲を見回して、理紀が首をかしげた。隣でヌクリアが満面の笑みを浮かべながら菓子を頬張る。 |
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035 | ヌクリア |
「ダンチョ、げんきになったね。ヌクあんしんした」 |
036 | ヘイズ |
「アルフロストはよく落ち着いたな、あんだけ騒がしかったのに」 |
037 | フローズ |
「ああそれは多分。故郷がなくなって帰る場所がなくなったのに、誰も認めてくれないから居場所がない。寂しかったんじゃないかな、兄は」 |
038 | クイーヴ |
「なんて都合の良さだ、単純じゃないか」 |
039 | フローズ |
「女医が言ってたろう、コインの表裏なんだって。気になるなら団長本人に聞けばいいじゃないか」 |
040 | リブレ |
「最近団長がちょっと子供じみてる気がするのは、多分その所為なんでしょうけど……ある意味凄い組み合わせですよね……何もなければ良いんですけど」 |
041 | ヘイズ |
「何もなければ、っていえば。レイジはどうなんだ、そこんとこ。クイーヴがここ最近気にしてたろ、様子がおかしいって」 |
042 | クイーヴ |
「生き急いでる気がする――っていうのはちょっと違うな。皆がこうやってワイワイ話してるだろ? それを遠くで自分は関係ない、みたいに見てるんだよ」 |
身振り手振り交えながらクイーヴは懸命に説明する。新しい菓子の袋を開けながら、ヌクリアが顔を覗かせた。 |
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043 | ヌクリア |
「レイジ、いつもそうだよ。でもね、ちょっとなかまはずれみたいにみえるよ」 |
044 | クイーヴ |
「それが自発的だから手に負えないんだよ。ここじゃ誰も外見気にしないから、気に病む必要ないと思ったんだけど、あれじゃあな」 |
045 | 藍羅 |
「レイジらしいっていうか、何ていうか――なんて言ってたらブラッドだけ戻ってきたけど」 |
046 | ブラッド |
「お前ら何全員でサボってんだ、姫さんもジジイどもが呼んでたぞ。全員罰として見回りけってーい」 |
047 | リブレ |
「巡回じゃ罰にならないじゃないですか」 |
048 | 理紀 |
「確かに日課ですしね。よーし行って来よーっと」 |
049 | クイーヴ |
「団長、レイジはどこに?」 |
050 | ブラッド |
「俺もすぐ見回りに出るから外で待たせてる。なんだその顔、辛気臭い奴だな」 |
正直な事に、少年は言葉に詰まった。 |
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051 | クイーヴ |
「うっ、別に何でもないんだけどさ。最近おかしいなって」 |
052 | フローズ |
「クイーヴ、置いて行くぞ。早くしろ」 |
053 | 藍羅 |
「皆なんだかんだ言って心配してるみたいねえ。単なる寄せ集めでも、死線くぐれば危機を共有した仲間になるから、ってとこかしら」 |
054 | ブラッド |
「え、あ、それに俺は含まれてる?」 |
055 | 藍羅 |
「アンタは筆頭でしょ? 当然含まれてると思うけど。何その嬉しそうな顔」 |
056 | ブラッド |
「いいや別に? よしじゃあ、俺もちょっと出てくるわ。レイジ借りるぞ」 |
057 | 藍羅 |
「何も変わったのは、レイジだけじゃないのにねえ。自覚ないのかしら」 |
腕を組み、藍羅は肩を竦めた。 |
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ホバーの座席に腰掛け、空を見上げる。鉄筋で囲まれた灰色の空は相変わらず無機質だが、今は不思議と心地よい物のように感じられた。冷たい空気に目を瞑り、レイジは全身の力を抜く。 |
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058 | レイジ |
「38度を超えると、平衡感覚薄れるんだな」 |
059 | ブラッド |
「あ、何? 何か言ったか?」 |
060 | レイジ |
「空耳だ、別にお前に用はない」 |
061 | ブラッド |
「……どうしようマジでレイジの様子がおかしいぞ、俺が視界にいるのにちょっと嬉しそうにしてるレイジとか、天変地異が起きない限り」 |
062 | レイジ |
「それは貴様の気の迷いだ」 |
063 | ブラッド |
「ああそうかい、それならそれでいいわい。で、旅団加入の返答は?」 |
064 | レイジ |
「前線を張ってやる。俺は元があるお前と違う、人型の武器だ。戦場にしか存在理由を見出せない」 |
何気なく答えた言葉に、ブラッドは黙り込んだ。 自分とよく似た、正反対の男は今となっては、前程憎らしく感じない。根底を同じくしている所為か、それとも自分自身の気が変わっただけなのか、それは己にも分からない。ただ一つ分かったのは、アルフロストの言動が、あまりにも自分と重なる事だ。 ブラッドは苦笑した。 |
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065 | ブラッド |
「いやな選択肢を選ぶんだなあ、お前」 |
066 | レイジ |
「アルフロストの醜態を見て思ったのは、俺もああなってたかもしれん、という事だ。目を逸らしたくないだけだな」 |
067 | ブラッド |
「素直で宜しい、宜しいが重たいぞレイジ。あとお前熱あんじゃねェ?」 |
068 | レイジ |
「さあな、さっきから周りが歪んで見えるんだが」 |
069 | ブラッド |
「そりゃお前の感覚の問題だ。って、ちょっと待て。ホバー止めるからじっとしてろ、畜生冗談のつもりで言ったのに」 |
慌ててホバーを停止したブラッドが顔を覗き込む。正直鬱陶しいが、構っていられる程の余裕はレイジにはなかった。 頭上の空を白い影が遮る。 |
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070 | レイジ |
「やめろ冷たい、触るな」 |
071 | ブラッド |
「げっ、マジ熱あるじゃねェか。何でこんなに動けるんだお前」 |
072 | 理紀 |
『団長ー、副団長が強盗捕まえたー! この場合どこに連行したらいいッスかー』 |
073 | ヌクリア |
『ダンチョ、ヌクがつかまえたー』 |
無線越しに注文が増え、ブラッドは慌てながら応対する。 |
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074 | ブラッド |
「公安に突き出せ! ええいもう、どいつもこいつもタイミングってモンを知らねェな、こき使ってくれるなよ! レイジ、一旦戻るぞ」 |
075 | レイジ |
「いい、俺なら問題ない」 |
076 | ブラッド |
「うわうわうわ、その言動からして支障ありまくりだ馬鹿、気がつけ」 |
077 | レイジ |
「 |
078 | ブラッド |
「お前今回組んだのが俺で良かったな。クイーヴ辺りじゃ運べずに放置だぞ。……おい、何か言ったらどうだ。お前ただでさえ喋らねンだから、心配になるだろ」 |
レイジは返事しない。口を開けば疲弊する。再びエンジンをかけるブラッドの様子が、いつになく慌しい。 |
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079 | ブラッド |
「あっ、もしかして寝たのかよ。余計な気を使わせやがって……本当に大丈夫だろうな」 |
080 | レイジ |
「お前、声が遠い」 |
081 | ブラッド |
「そりゃお前の熱の所為だ」 |
082 | レイジ |
「……悪くないな、こういうのも」 |
083 | ブラッド |
「そうかい、それじゃ後で俺に感謝すんだな。楽しみにしてる」 |
自嘲気味に呟いたレイジに追い討ちをかけ、ブラッドは苦笑した。 調子が狂う。体重を預け、目を瞑る。 |
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084 | レイジ |
「少し、眠る。ホバー揺らすなよ」 |
085 | ブラッド |
「注文の多い奴だな、ホント」 |
(cast credit) (ED:true) |
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086 | レイジ |
最後に見た景色は。 最初に見た時と同じ、黒い世界を染める、白い雪だった。 |