GUNBAZE

ACT04 Psychedelic Howling [ blaze_04 ]
No. キャラ 台詞、状況
001 アルフロスト

「嘘だ、アルカサスが滅んだなんて。俺から何もかも根こそぎ奪ったくせに、フローズからも故郷を奪うなんて……」

 少年は肩を抱いて震える。

 遠巻きにその様子を見守りながら、ブラッドは深く溜め息をついた。

002 ブラッド

「お前が眠ってた11年、何もなかったなんて事、あるはずがないだろ」

003 アルフロスト

「話が違う――白衣の連中、俺が献体になれば村はそのままにしてやると言った! 話が違う!」

004 ブラッド

「そういう連中だって、自分がよく知ってたくせに。俺はお前を庇えるが、お前にゃなれない。そこんとこよく思い出せ」

005 アルフロスト

「なんで、なんでこんな事になったんだ……お前、本当は全部知ってたんじゃないのか」

006 ブラッド

「俺が知ってるわけねェだろ、俺はお前と同じだからな」

007 アルフロスト

「同じ? 笑わせんな、お前が俺と同じ? なら何でお前はそんな澄ました顔してられるんだ! 俺にはもう何もない、何もないんだぞ!」

008 ブラッド

「臆病者。いい加減にしろアルフロスト、いい迷惑だ。俺ァ別に何とも思わねェけどよ。お前が辛かねェか、こんなの」

 言い放つ。

 アルフロストは徐々に怒りと怯えの色から表情を変え、嘲笑を浮かべた。

009 アルフロスト

「黙れよ。お前が、そんな言葉を吐く権利はない」

010 ブラッド

「卑怯なんだな、アルフロスト」

011 タイトルコール

(タイトルコール)

 GUNBLAZE the 3rd chapter

 GUNBLAZE ACT4 - Psychedelic Howling

012 藍羅

「レイジ、銃を下ろしなさい。ここでは発砲厳禁よ」

 腕を組み、不快感を露わに藍羅は溜め息をついた。

 レイジは銃口をサージェの額に向けたまま立ち尽くした。複雑な感情がこみ上げる。一言では言い表せない不愉快さが、そこにはあった。

013 レイジ

「不愉快な話か、確かに不愉快な話だな。お前が親か、別に親でも構わない。だが自分の子供を実験に差し出せるような親か、反吐が出る」

014 藍羅

「レイジ、銃を下ろしなさい。穿き違えないで。今あたしがしてるのは、命令よ」

015 ヘイズ

「だとよレイジ、少し頭を冷やせ」

016 レイジ

「……この分じゃ、アルフロストの言い分も分からなくはない」

 舌打ちし、振り上げた腕をゆっくりと下ろす。撃った程度で気が済むはずもない。

017 サージェ

「片方は遺伝子情報を元に一から造り上げること。片方は既存の人間に改良を施すこと。二つの実験は同時に進行していた」

018 フローズ

「その内の片割れが、アルフロストというわけですか」

019 サージェ

「身寄りのない子供なんかが使われたな、アルフロストは村からも見捨てられていた。都合が良かったと言ったろう」

020 フローズ

「そんなくだらない……国家の威信を保つためだけの、実験の犠牲に……」

021 サージェ

「恐怖を感じない武器は敵を知らないからな。閣下が欲しがったのは、そういう武器だ。その意味ではブラッドは確かに成功例だったかもしれない」

022 リブレ

「結果として暴れすぎた、ってところですか。実際にクーデターを起こしたのも団長ですしね」

023 サージェ

「アルフロストは、ブラッドを受け入れないだろう。自分にないもの全て持っていて、自分が持っていた物全て奪って行ったんだからな」

 手を組んで嘆息する。サージェは辛そうに目を伏せた。

 レイジは無言で扉の脇に寄りかかったヘイズの前を通り過ぎ、廊下へ出る。

024 ヘイズ

「レイジ、どこに行く。話は途中だぞ」

025 レイジ

「興が冷めた。これ以上聞いていても腹が立つだけだ」

026 リブレ

「まあ、無理はないかもしれませんね。団長の立ち位置が、一つズレたら僕だった可能性もないわけじゃない。そう考えたら不愉快です」

027 理紀

「え、どうしてですか?」

028 リブレ

「僕も身寄りのない子供でしたから」

029 理紀

「あっ、なるほどそういう事スか」

030 サージェ

「レイジ、一つ詫びさせてくれ。私の立場がない」

031 レイジ

「その話を信用しろと言うのか、ほどほどにしろ。お前らの都合で他人ヒトを弄るな」

032 サージェ

「待て、レイジ!」

 慌てて立ち上がるサージェを尻目に、藍羅は肩を竦めた。廊下へ姿を消す女医の後を追わなかったのは、無意識の同情が勝っていた所為かもしれない。

033 藍羅

「物事の解決には時間が必要ってわけね……理紀、お茶にしましょ」

034 理紀

「あっ、はい。手伝います」

035 ヘイズ

「フローズ、お前もそこに座り込んでるなよ。冷えるぞ」

036 リブレ

「よく黙ってましたね、フローズ」

037 フローズ

「……いや、彼に怒りを取られた気がしたんだ。怒るタイミングを逃した」

038 クイーヴ

「こんなところにいたのか、お前。外まで探し回ったのが馬鹿みたいじゃないか」

 周囲を見回しながら、少年は溜め息混じりに呟いた。薄暗い格納庫のソファに、男が一人転がっている。

 興冷めの一言そのままに、呆れた様子しか感じられない。

039 レイジ

「誰も外にいるなんて、一言も言ってないが」

040 クイーヴ

「はいはいはい、勘違いした僕が悪うございました!」

041 ヌクリア

「ヌクがみつけたんだよ」

042 クイーヴ

「分かった分かりました、有難う御座います」

043 ヌクリア

「ダンチョ、まだおきないね。つかれちゃったのかな」

044 クイーヴ

「気になるならついてればいいじゃないか」

045 ヌクリア

「ヘイズとリブレがいるから、ヌクいい」

 視線だけで返答し、クイーヴは勝手に壊れかけのソファに腰掛けた。格納庫は薄暗く、冷える。

046 クイーヴ

「あのサージェって人」

047 レイジ

「説得のつもりなら諦めるんだな」

048 クイーヴ

「違う。レイジが怒るのも分からなくないけどさ、あの人の事否定したら、今いるお前も否定する事になるんじゃないか――ってちょっと思った。綺麗事だけどさ」

049 レイジ

「何が言いたいんだ」

050 クイーヴ

「知らないよ、僕に聞かれても困る。フローズにしたってレイジにしたって、事が事だけに僕には難しいんだ。何言ったらいいのかなんて、僕には分からない」

 半ば逆切れしながらクイーヴは言い放った。言いたい事が分からないわけではない、言葉にするのが難しいのだ。

 それきり黙ってしまった少年を前に、レイジは溜め息をついた。今後の事など何一つ考えた試しはなかった。

051 レイジ

「……ここへ来れば、何か分かるんだと思ってた。当分の目的と言えば、復讐しかなかった。その復讐対象がなくなった今、何がしたいのか、分からなくなった」

052 クイーヴ

「それじゃ、さっきのはただの八つ当たりじゃないか」

053 ジャスカ

「レイジもお子様だったーってことじゃん」

054 クイーヴ

「何だ、お前いたのか」

055 ジャスカ

「さっき虐められたからって、この人酷いや! 何とか言ってやってよレイジ――って、いない!」

 騒ぎ立てながらジャスカが振り返る。レイジは既にその場にはいなかった。

056 クイーヴ

「なんだかこの短い間で、皆変わったな。レイジなんて特に喋るようになった気がするよ……」

057 ヘイズ

「ちょっとは目ェ覚めたか、レイジ」

 壁に寄りかかったまま腕を組み、ヘイズが苦笑する。仮眠室を囲む白灰の軍服の群れを分け、中へ進む。

 寝かされたままのブラッドもといアルフロストは未だ目を覚ます様子はない。

058 レイジ

「様子は変わりないか」

059 サージェ

「全然だな。早いところ起きないと私では手に負えんぞ、ブラッド」

060 理紀

「前から無理してたのかな。酷いなァ、団長。いつも一人で勝手に進んでくから、僕ら追いつけないよ。旅団なのにね」

061 サージェ

「昔からこうなんだ。救いようのない奴だな」

062 藍羅

「フローズが知るアルフロストと、今回騒ぎを起こしたアルフロストはどうも感じが違うみたいだけど、どうなの?」

 マグカップ片手に訊いた藍羅に複雑な色を浮かべた視線を投げかけ、フローズは張っていた肩を落とした。

063 フローズ

「アイザック・レブナンスは恐怖で国を統治していた、私はこれも一つの方法としてはありかもしれないと思ってる。話をするならそこからですが」

064 藍羅

「構わないわ。あたしも似たような事、考えた事あるから」

065 フローズ

「兄はいつも村の中心にいました。私は当時はまだ幼くて、両親の謀反の事もよく分からなかった」

066 リブレ

「アルカサス……11年前ですか、結構最近の話ですね」

067 フローズ

「軍は見せしめに村を焼き払おうとした。それを阻止しようと、兄は自ら捕虜を名乗り出たんです。でも実際は兄の条件に反して、村は滅ぼされた」

 フローズがヘイズの方へ視線を傾けると、ヘイズはそれに気がついた様子で片眉を上げた。

068 ヘイズ

「コイツが商団に乗り込んで来た時はただ事じゃないとは思ったが、その事件の後か」

069 フローズ

「私が知らないところで何度も裏切られて、変わったんじゃないかな……私が何を言っても変わらない気がするけど、言わない限りそのままかもしれない」

070 藍羅

「即位して一番最初の問題がこれねえ、ちょっと危ういわ」

071 アルフロスト

「……ここはどこだ」

 身動ぎせず天井を見上げたまま、男は呟く。

 レイジは無言で銃口を向けた。

072 藍羅

「レイジ、駄目よ。銃を下ろして」

073 レイジ

「お前は警戒心がなさすぎだ。アルフロストが憎悪しているのは、何もそこの女医だけじゃない」

074 藍羅

「分かってるわよ、そんなこと」

 子供のように拗ね、藍羅はそっぽを向いた。

075 サージェ

「気分はどうだ、アルフロスト。鎮静剤を打ったから、暫く起き上がらない方が良いかもしれないが」

076 アルフロスト

「最悪だ。お前がいるから尚更だ。レイジ、何故俺に銃を向ける? お前なら俺のこと、よく分かってくれると思ったのに」

077 レイジ

「何度も言わせるな、俺はお前じゃない」

078 アルフロスト

「残念だ。非常に残念だ。ブラッドと同じ事を言うんだな、本当に残念だよ」

 ゆっくりと上半身を起こす。アルフロストはサージェの首へ腕を伸ばした。

 咄嗟にリブレは隠し武器を手に取る。

079 リブレ

「女史、退がって下さい」

080 サージェ

「構わない、私の咎だ。逃げたら意味がない」

081 アルフロスト

「自分がした事、自分の身で思い知れば良いんだ。そうだろう、なあレイジ。銃を貸せ、お前だってこの女が憎くて仕方ないだろう?」

082 藍羅

「レイジ! 渡しては駄目よ!」

 藍羅の制止も空しく、銃はアルフロストの手に渡る。アルフロストは弓なりに笑んで、銃口を女医の頭へ突きつけた。

083 アルフロスト

「ほら、な。お前は自分が造ったものに、殺されるんだ」

 引き金を絞る。金属を打つ硬い音が響く。確かに引き金は引かれた。

 サージェは瞑っていた目を丸くして、強張った身を見回した。

084 サージェ

「何ともない……何故だ」

085 アルフロスト

「俺は確かに撃ったのに……レイジ、お前何をした!」

086 レイジ

「最初から弾が入ってない。それだけだが」

087 アルフロスト

「それがお前の答えってわけか! 結局誰も俺の事を」

088 フローズ

「兄さん、聞く耳がないのはどっちですか」

 静かに、だが腹から力を振り絞り、フローズが割り込む。周囲の注意は、一転してフローズに向いた。

089 アルフロスト

「フローズまでそんな事言うのか、お前は被害者なんだぞ。お前にはレブナンスを憎む理由があるんだぞ」

090 フローズ

「……兄さん、よく思い出して。団長は貴方、誰も貴方を否定していない。貴方は被害者じゃない。貴方も一緒に前線で、色んな村を滅ぼしたんだよ」

091 アルフロスト

「俺はブラッドじゃない! 俺はブラッドとは違う!」

092 フローズ

「じゃあ何故、貴方は私に対して兄のように振舞うんですか。ブラッドは貴方の一部じゃないんですか!」

093 アルフロスト

「俺の一部? ブラッドが? 冗談じゃない、俺にはああはなれない」

094 フローズ

「貴方は騙されていたというけど、私は貴方に騙されていた事、忘れませんからね。でも、貴方がアルフロストであるのなら、私は嬉しい」

 言い切って、フローズは苦笑した。曖昧な笑みに誤魔化されながら、アルフロストは俯く。それでも負の感情は未だ捨てがたい。

095 アルフロスト

「フローズ。フローズ・メルティ」

096 フローズ

「何でしょう」

097 アルフロスト

「ずっとそこにいたんだな、お前は」

098 フローズ

「――ただいま。あとお帰り、兄さん。貴方はここに居ていいんだ」

099 ヘイズ

「お前はもういいのか、レイジ」

 所在無さ気に肩を竦めてヘイズは笑う。無言で外の雪を眺めていたレイジは、つられて振り返った。

100 レイジ

「今ここで撃ち殺して、わざわざ楽にさせてやらない方が良いような気がした。気が変わった。あの女なら、いつでも寝首かけるからな」

101 ヘイズ

「性格悪いな、どっかの参謀みたいな言い分だ」

102 レイジ

「それに、ここも案外悪くない」

103 ヘイズ

「へえ? お前の口からそんな単語が飛び出すとはな」

104 レイジ

「藍羅・レブナンスが賢帝になるか、それともアイザックの二の舞になるのか、賭けてみる気はないか」

 人間じみた平凡な思考が巡る。口をついた言葉に己自身驚いた。

105 クイーヴ

「どんな気まぐれだ? ちょっと変だぞ、最近」

106 レイジ

「さあな、俺にも分からない」

107 リブレ

「ブライガとの和解に躓いて、エアドレイドとの交渉に難航するだろう、に10」

108 ヘイズ

「閣下の尻拭いか、ありそうだな。その上で武力行使は踏み止まるに20。二の舞はねえな」

109 クイーヴ

「そんな事を言い出したらキリがないんじゃない?」

110 理紀

「皆、姫様の事信じてないんスかねえ」

111 ヌクリア

「おうじょさま、がんばってるよ? ヌクしってるよ」

112 ヘイズ

「おいおいおい、勘違いすんなよ。俺らは上の顔色を伺ってればいい、けど姫は国民の顔色を伺わないといけない。立場が違う」

113 理紀

「姫様一人で解決するわけでもないのに、今からプレッシャーかけるのはどうかなー」

 理紀だけがあからさまに藍羅に味方した。これも立場の違いというものだろう、などと傍らで様子を眺めた。

 レイジは物音を立てぬよう立ち上がり、会議室を後にしようと一歩踏み出した。

114 クイーヴ

「言いだしっぺのレイジはどうなんだ?」

115 レイジ

「……俺は、その結果を見る事ができない、に10」

116 ヘイズ

「なんだそりゃ、随分消極的だな」

117 リブレ

「レイジ君、顔色悪そうですけど、どこに行くんです?」

118 レイジ

「心配なんぞしなくても、黙っていなくなんかならない」

 淡々と言葉を残し、レイジは姿を消した。

 白コートを見送りながら、クイーヴは眉を顰めた。

119 クイーヴ

「やっぱり、最近ちょっとおかしいよなアイツ」