GUNBLAZE

ACT03 Double Dealer [ blaze_03 ]
No. キャラ 台詞、状況
001 フローズ

「ヘイズ、ヘイズ聞こえるか。至急調べて欲しい事があるんだ。こちらフローズ! 聞こえてるなら返事しろヘイズ!」

 無線に向かって半ば苛立ちながら呼びかける。

002 フローズ

「なんで肝心な時にのんびりしてんだアイツ……! リブレまで応答がないなんて」

 苦々しく吐き捨て、無線を放ろうと腕を振り上げる。途中で馬鹿馬鹿しくなってやめた。フローズはホバーに頭を項垂れて溜息をつく。

003 フローズ

「今、あの人を一人にしておくわけにはいかないのに……」

004 ヘイズ

『おいフローズ、何か用か? さっき呼んだだろ』

005 フローズ

「遅い! 返事は素早く寄越せ、時間の無駄だ」

006 ヘイズ

『聞き込みしてっからその期待には応えられない。つーかお前、何か用があったんじゃないのか?』

007 フローズ

「ヘイズ今どこにいる? 団長とかリブレと一緒なのか?」

008 ヘイズ

『リブレはいるが、あの薄ら馬鹿はいないぞ。さっき分かれたばっかりだけどな、レイジが……』

009 フローズ

「今どこにいるか分かるか!?」

 地図をばさばさと広げ、食いかかる。アナログ式の地図を持ってきた事を今更ながらに悔いた。無線越しに、ヘイズは気圧された様子で応える。

010 ヘイズ

『何そんなに慌ててるか知らねーけどな。あんま移動してなければ、まだ広場の方にいんじゃねーか? レイジがいるから、そう大変なことにはならないと思うが』

011 フローズ

「分かった、今から向かう、広場ならここからでもそんなに遠くない」

012 ヘイズ

『……お前俺の話聞いてたか?』

013 タイトルコール

(タイトルコール)

 GUNBLAZE the 3rd chapter

 GUNBLAZE ACT3 - Double Dealer

 緑目のブラッドは大剣片手に、やや大袈裟に肩を竦めて笑う。

014 アルフロスト

「怯えるなよ、逃げるなよ、俺が怖いのか同胞。傷つくなあ、俺はお前が嫌いで嫌いで仕方なかったのに」

015 レイジ

「……お前の魔法は強烈だ、こんな狭い場所で使うつもりか」

 言葉は冷静を保っていたが、実際のところ焦りを隠せない。レイジは一歩一歩後退りながら一定の間合いを保つ。

 じりじりと距離を切り詰め、アルフロストはレイジを指差した。

016 アルフロスト

「知らないね、そんなのお前次第だよ――お前は、楽に殺しやしないさ。だってお前は俺が味わった絶望を知らない」

017 レイジ

「当然だ、俺はお前じゃない。分かるはずがない」

018 アルフロスト

「……そんなの、フェアじゃないだろう? 俺もお前も、同じなのに!」

 剣を振るう。切っ先が地面を抉って瓦礫ごと舞い上がる。レイジは咄嗟に後方に飛び退いた。背後を確認し、毒づく。

019 レイジ

「後ろは広場……不味い」

020 アルフロスト

「なあ、あの女を捜してるんだろ? アンタ、居場所知ってんの」

021 レイジ

「剣を振り回すな、破壊魔」

022 アルフロスト

「加減のコツが分からないんだよ、自分の体なのにさあ。誰の所為だと思ってんのかな、あの女。見つけて、今度は俺が」

023 レイジ

「そんな事のために、外殻を乗っ取ったのか……」

024 アルフロスト

「そんな事のため? それは俺の台詞だよ! レイジ、アンタはいいよな。最初っからその姿だ、失うものが何もない!」

025 レイジ

「アルフロスト・メルティ……確かにあのヒヨコの言う通りだってわけだ」

 振るわれた剣を避け、地面を転がった。足下が凍り付いて滑る。

 自嘲にも似た笑みは止まない。

026 アルフロスト

「フン、ブラッドに言わせりゃ俺は確かに馬鹿かもしれないけどさあ。そうじゃないだろ、違うだろ、本当は。最初っから、誰も。俺の事なんて知らないんだよ、違うかあ?」

 地面についた手が冷える。凍った地面に周囲を見回し、レイジは勘付いた。周囲は凍っていない。自然に発生した物ではない。

027 レイジ

「氷……ここだけ? まさか」

028 フローズ

「レイジさん、そこを退いて下さい」

029 アルフロスト

「お前は……フローズ? 何でこんなところに」

030 フローズ

「旅団の権限を用いて、私の独断でこの暴動を鎮圧します。貴方は少し暴れすぎた」

 足下の氷を砕いて少女が降り立つ。手にした刃が青白い光を放った。

 フローズは淡々と告げ、目の前に立つ金髪の男を静かに見据える。それに驚いたのはアルフロストの方だった。僅かに狼狽し、手にしていた剣をゆっくりと下ろす。

031 アルフロスト

「フローズ、フローズだよな? 旅団の権限だって? 何でお前が旅団に居着く? 帰ろう。帰ろう、北の」

032 フローズ

「黙って下さい、貴方はアルフロストなんかじゃない。貴方はただの暴徒だ」

033 アルフロスト

「フローズ! 北へ帰るんだ! 俺が、今度こそ一緒に」

034 フローズ

「……兄さん、帰る場所なんてない、アルカサスの村は滅びたよ」

035 アルフロスト

「嘘だ! ――嘘だ嘘だ嘘だ! 滅んだ? じゃあ何のために俺が! 何のために俺はレブナンスこんな場所にいるんだ!」

 周囲の視など構わず喚き散らす。フローズはやや目を伏せ、続けた。

036 フローズ

「レイジさん、私があの黒コードを押さえるので、援護をお願いします。別のプラグに差し込むと少し麻痺するんです、いいですか」

037 レイジ

「……分かった、何とかしよう」

038 アルフロスト

「ハ、ハハ、ブラッドか? ブラッドだな? あの男、あの男まで俺を騙してたんだな?」

039 フローズ

「可哀相な人……」

 呟いて一歩踏み込み、フローズは身を低く構えた。アルフロストが手にした黒カードの記号が炎熱系のそれだった。

040 アルフロスト

「誰も信用できるものか、俺を騙してきたこんな国! 滅べばいいんだ!」

041 レイジ

「伏せろ!」

042 フローズ

「……あ、フレイムボルト……!」

 レイジに無理矢理頭を押さえつけられたフローズが地面へ伏せる。硬質な足音が耳元を通過する。爆発が起きたと知覚した瞬間、負傷を覚悟した。

 爆音に耳を塞ぎ、空気の振動の後にゆっくりと目を開く。

 耳鳴り混じりに耳朶を突いたのは、無機質な音。

043 レイジ

「……大丈夫か。無茶苦茶だな」

044 フローズ

「不思議と何ともありませんが……アルフロストは?」

045 サージェ

「慣れない魔法の反動で伸びてる。二人とも怪我は? ――やれやれ、全く人騒がせな」

 聞き慣れない声に顔を上げる。赤い髪の女が視界に入った。サージェ・クライナは苦笑しながらアルフロストを見やる。

 教えられた特徴と、未だ持っているディスクの中身を思い起こし、レイジは目を丸くした。

046 レイジ

「赤い髪にオッドアイ……サージェ・クライナ……!」

047 サージェ

「何故私の名前を――そうか、旅団か。しまったな、運がない」

048 フローズ

「探し人が見つかったわけですか、都合が良いですね」

049 サージェ

「私を、探してたのか?」

 複雑な表情を浮かべて口篭る。返答に困ったまま無言でいると、遠くから続くエンジン音が会話に割って入った。

050 リブレ

「あ、ヘイズ! あの人、あの人です! 右右右!」

051 ヘイズ

「うるせえ! そんなゴチャゴチャ言うなら自分で運転しろ!」

052 フローズ

「お前ら遅い! 本当に肝心な時に来ないな!」

053 リブレ

「残念、僕らは貴方のヒーローじゃありませんから。さてクライナ女史、逃げ場はありませんよ。ご同行願えますか、状況はご存知でしょう?」

 にっこりといつもの笑みを浮かべて、リブレは告げた。

 流石にサージェも観念した様子で肩を竦め、目を伏せた。

054 サージェ

「仕方がないな、話を聞こう。その前に一つ、そこで伸びてる男に鎮静剤を打ってもいいか?」

055 ジャスカ

「なんですかこれ胃薬じゃないですか、風邪にこんなの効くんですか」

 物珍しげに小瓶を手に取って、蛮猫の少年が棒読みのまま尋ねる。枕に頭を埋めたままクイーヴは盛大に溜め息をついた。

056 クイーヴ

「煩い、気休めだ。風邪薬の一つ置いてない、ここの連中が悪い」

057 ジャスカ

「おおなるほど。――ジャスカは経験値を手に入れた、ジャスカのレベルが一つ上がった。伝説の読める空気を手に入れたー。で、解熱剤要らないの?」

 ここぞとばかりにからかい半分にジャスカは続けた。憎々しげに睨み付け、残った力を振り絞ってクイーヴは吐き捨てる。

058 クイーヴ

「いらん、お前に持ってこられたら何されるか分かったもんじゃない」

059 ジャスカ

「誰もいない内に張り切って片付けておこうーなんて、雪かきしたら自分が雪だるまなんてさー。プッ、流石だね」

060 クイーヴ

「いっぺん雪崩の下に埋めてやろうか、クソ猫」

061 ジャスカ

「片付けどころか、仮眠室占領してサボってるのはどこの誰かなー」

062 クイーヴ

「姫の護衛すらできないヘタレが何言ってんだ、この役立たず! 何でこんなところにいるんだお前!」

063 ジャスカ

「うっ! 仕方ないじゃん、僕より姫様の方が腕っ節強いんだからさ」

 ぎくりと肩を振るわせた少年の様子に満足げに嘲笑を浮かべながら、クイーヴは再び布団へ潜り込んだ。事の次第はジャスカの弄る通りである。

 壁の向こうから顔を覗かせ、理紀が罵声の浴びせ合いに構わず、暢気に割り込む。

064 理紀

「風邪の人の近くにいたらうつっちゃうッスよー。クイーヴさん、何か少しお腹に入れます?」

065 クイーヴ

「最近、僕を労わってくれるのは理紀だけな気がする……」

066 ヌクリア

「ヌクもいるよ、ヌクもしんぱいだよ」

067 クイーヴ

「それはなんか違う同情な気がする……」

068 ヌクリア

「あっそうだ、んとね、リブレから"伝言"だよ」

069 理紀

「そういえばさっき通信が入ってたッス」

 ベッドの端にしがみ付き、幼い猫が記憶を引き出しながら口を開く。

070 ヌクリア

「ダンチョみつけたから、すぐにもどるって。"仮眠室"あけとけっていってたよ」

071 クイーヴ

「え……病人を追い出す気か、あの鬼畜! ふざけんな、徹底抗戦してやる!」

072 ジャスカ

「あははははは! ここまでツいてないなんて、もう笑うしかないよねー」

 ジャスカは腹を抱えた。その後クイーヴに文字通り殴られ、昏倒した。

 扉の開く音に身を振るわせる。様子を伺ってみれば、馬鹿でかいナリの男を肩に背負ったヘイズが睨みを利かせていた。

073 ヘイズ

「あっ、おいクイーヴ、お前何仮眠室陣取ってんだ。今すぐ空けろ」

074 クイーヴ

「病人に対して、なんて酷い仕打ち……って、それ団長じゃないか! 何があったんだ」

075 ヘイズ

「その理由は後で説明する、お前は早くどけ。とにかくコイツ重てーんだよ」

076 理紀

「クイーヴさん、こっちこっち。何だか邪魔しちゃ不味い空気ですよ、これ」

 後方から理紀が声を潜めて手招きする。クイーヴは舌打ちし、枕を抱えて立ち上がった。

077 クイーヴ

「お前ら後で覚えてろよ……」

078 リブレ

「あれえ、君熱でもあるんですか? そっちに医者がいるから診てもらえばいいじゃないですかー」

079 クイーヴ

「誰の所為だと思ってんだよ、お前ら……」

080 理紀

「医者って、……あ、死刑執行の時にも来た人ですよね」

081 サージェ

「その節は。レイジだけはまともに顔を会わせるのは、随分久しぶりになるのかな」

 斜め後ろに立つ男を一瞥して、サージェは嘆息した。周囲の視線を一身に受ける。同情も悪意も、視線に含まれる感情はそれぞれだ。

 レイジはレブナンスの地下で遭遇した時の事を思い出し、苦々しく呟いた。

082 レイジ

「気まぐれに俺の前に現れた医者が、お前だとはな」

083 サージェ

「私もアルフィタで遭遇した時は、驚いたがな。――それで、私に話があるというのは誰だ」

084 リブレ

「本来なら団長のはずなんですけど、状況が変わりましたからね」

085 クイーヴ

「僕が追い出された理由の説明を要求する。あと置いてかれた理由も」

086 ヘイズ

「それは単純にお前が使えなかっただけだ」

087 フローズ

「ずっと探してた兄は、やっぱり一番近くにいたんだな。おかしいと思ったんだ」

088 ヌクリア

「……ねね、ダンチョ、ねちゃったの?」

089 サージェ

「さあ、どうだろう。暫くアルフロストが出張ってたからな……もしかしたら、あれを押さえ込むのに消耗してるかもしれん。ブラッドが出てきてくれれば良いんだが」

 少し間を置いて、サージェはベッドの縁に腰掛けた。

 招待者がいない。沈黙の苦しさを改めて実感する。

090 藍羅

「皆入り口を開けて、招待者はあたしよ」

091 理紀

「姫様! このタイミングで、って事は誰が?」

 ジャスカが胸を張ってどんと叩く。

092 ジャスカ

「勿論僕しかいないに決まってるじゃないですかー、はっはっは」

093 クイーヴ

「どうしよう、あのヘタレ猫が空気読めるようになってる……」

094 ジャスカ

「なんだと! 聞き捨てならない言葉を聞いた気がする!」

095 藍羅

「サージェ・クライナ、久しぶりね。今回貴方を呼んだのは、あたしよ。ああいいの、座ったままでいいわ」

 慌てて立ち上がったサージェを制しながら、藍羅は苦笑した。しかしその言葉にも関わらず、サージェは頭を下げる。

 律儀だ、と藍羅は思った。

096 サージェ

「ご無沙汰しております、陛下。私を呼んだのが貴方なら、貴方はブラッドの事をご存知で?」

097 藍羅

「今の今まで知らなかったわ。レイジのためと言い張って、実は最近のブラッドの異常行動もあったからなんだけど」

098 レイジ

「……だろうと思った」

099 藍羅

「皆が揃ってるから聞くわ。アルフロスト・メルティは何者なの? ブラッドは一人の人間じゃなかったの?」

 サージェは息を呑んだ。

100 サージェ

「いつか話さねばならないと思ってはいたんだが……酷だな。人を選ぶ話だ。それ以上は私の口から言わせるな。貴方がたが……知って良い領域ではない」

101 レイジ

「言えないような研究をしてたのか、貴様は」

102 サージェ

「その通りだ、としか言えない。聞く覚悟のない人間に話せはしない」

103 フローズ

「……団長が兄なら、私は部外者ではないはず」

104 リブレ

「とは言っても、既に僕ら巻き込まれてますからね。部外者とは言えないでしょう? 仮にも団長は上官ですよ」

105 藍羅

「そうね、この場にブラッドと関わりがない人はいないわね」

106 サージェ

「……そうか、ならば仕方あるまい。ブラッドは、アルフロストを押さえ込むためだけに造られた、器だ」

 淡々と告げ、サージェは俯いた。フローズは訝って顔を上げる。

107 フローズ

「押さえ込む? 兄を?」

108 サージェ

「レブナンス北側に位置する、テナウ=ハサハという町があるだろう? 数年前に最北端のアルカサスという村が滅んだ」

109 藍羅

「謀反を企んだから、と聞いたけど」

110 サージェ

「そうだ。首謀者はその場で打ち首、村人を代表して一人の少年が人質として、レブナンスに渡った。それがアルフロストだ」

111 レイジ

「一人? レブナンスがその程度で黙っているはずがない」

112 サージェ

「その頃レブナンスは、人体実験のための献体を欲しがっていた。都合が良かったんだ……実に都合が良かった」

113 レイジ

「……俺の試作品がいたはずだ。廃棄場のスクラップ以外に、俺と近い性能の」

114 サージェ

「知りたいか。レイジ自身にも関わる事だぞ」

 低く、呟く。しかしレイジは静かに見返すだけで、拒否の言葉は口にしなかった。サージェは念を押したつもりで、火を放ったようだった。

115 サージェ

「ブラッド・バーン・ブレイズは失敗作だ。暴れるアルフロストを制御するために造られた外殻、私が造った」

116 フローズ

「それなら兄と団長は同一人物のはずじゃないですか! 何がこんなに違うんだ」

117 サージェ

「研究者にとって扱いやすい人格――それがブラッドなだけで、根本は何も変わらないんだよ妹君いもうとぎみ

118 フローズ

「そんな事……! そんな事、私はずっと彼に騙されてたと言うんですか! いるのかいないのか分からない素振りを見せておきながら、あの人は!」

119 サージェ

「それはブラッドに言うんだ。彼らはコインの表裏と同じだ。どちらもブラッドだし、どちらもアルフロストだ。切り離して考えちゃいけない。アルフロストはそれを拒絶しているだけの事」

 一枚のコインを取り出してサージェは笑う。

120 サージェ

「そして同時に、私が鐵零仕の親でもある……どうだ、不愉快な話だろう? 少し、休憩を挟まないか」