GUNBLAZE

ACT02 Venomous Deride [ blaze_02 ]
No. キャラ 台詞、状況

 踵を鳴らし扉の前に立つと、いつものうだつの上がらない従者が顔を上げて応じる。ジャスカは視界に白服の男と、灰色の野戦服を纏った魔人を認めて、慌てた様子で主を呼んだ。

001 ジャスカ

「姫様? 旅団の二名来ました」

002 藍羅

「通して。ジャスカも入っていいわよ」

003 ジャスカ

「――だってさ、入れ。ところでレイジ、団服ちゃんと渡したはずなのに、お前なんで支給された一般兵の服着てるんだよー」

004 レイジ

「時間がなかっただけだ」

 恨めしげに唸るジャスカの言葉を軽く受け流す。部屋に入ると、半ばやつれた様子の藍羅が苦笑交じりに迎えてくれた。ブラッドは生真面目に頭を下げた。しかしその口調は軽々しい。

005 ブラッド

「ご機嫌麗しゅう、陛下」

006 藍羅

「座って座って。ブラッド、なんの冗談よそれ。アンタに陛下なんて言われたくないわよ。ほらレイジの様子がおかしいでしょ」

007 レイジ

「なんか寒気が……」

008 ブラッド

「ひでー。レイジもひでー。最近ずっと悩んでるみたいだから、ふざけてみたってのによー」

009 藍羅

「そうそう、クーデター前に追放だったのが納得いかないのよねえ。あの時死刑になってたら、今頃どうなってたのかしら」

010 ブラッド

「投獄すりゃ尋問しないといけなくなる、それを避けたかったんだろ。あんま深い事考えンなよ、専門家に任せとけ。で、そこのヘタレ従者連れてって役に立ったのか?」

011 藍羅

「……癒しくらいには?」

012 ジャスカ

「ちょっと姫様ァ!? ひどいや!」

 テーブルを叩いて割り込む少年を退けて、藍羅は笑う。どこからどう見てもからかっている以外には見えない。

013 藍羅

「まあこの数年で分かった事なんて。どう頑張っても争いは、綺麗事にはなりえないって事くらいだわね。レイジ、多分少し聞いてると思うけど、人探しをしてもらえないかしら」

014 レイジ

「人探し……誰をだ」

015 藍羅

「サージェ・クライナ。あたしが最初にアンタに声を掛けた時に持ち出した、セロって薬覚えてる? アレに関わってた研究者よ」

016 ブラッド

「死刑執行の時に来てた女医だ。戴冠式の前にまたふらっとどっか消えたんでな。探すところからやり直しってワケだ」

017 レイジ

「探し出してどうする。その女と俺と、どういう関わりが……」

 吐き捨てた。繋がりがあるのかも分からない人間を探してどうするのか。一つ思い当たる節があって、言葉の途中で口を噤んだ。

018 ブラッド

「思い当たったか? 赤い髪と金と緑のオッドアイのさ、黒衣の医者」

019 レイジ

「まさか、あの女か……地下研究棟の研究主任と、アルフィタの医者と……同じ女だったのか」

020 ジャスカ

「なーんかさー聞いてるとレイジもさー。何回も見てる人間を、別人と思ってたりして、案外間抜けだよね。ってそこ! いたいけな猫に銃口向けない! 本来ならここに武器持ち込むのだって禁止だぞ!」

 気の抜けた声が割り入る。撃鉄を鳴らすとすぐにジャスカは黙った。

022 ブラッド

「アルフロストについても知りたくないか? フローズといい、お前といい、最近気にしてるようだったしな」

 何気ないブラッドの一言が虚を突いた。

023 レイジ

「知ってたのか?」

024 ブラッド

「牢にぶち込まれた時に気にしてたろ。姐さんならアイツの事も知ってる」

025 藍羅

「問題なのは、彼女が姿を消した時に関連データ全部消されたってとこかしらね。ジャスカに探らせてたけど、目撃情報から先もないし」

026 ブラッド

「その辺はリブレに当たらせてるから、時間の問題だな」

027 レイジ

「探し出して、喋らせて、その後どうする。その後の俺は、どうすればいい。……俺は武器だ、武器以外にはなれない」

 所在無い不安は、唐突に居場所がなくなった気がしたためだとすぐに検討がついた。肩を竦めて、ブラッドは苦笑した。苦笑する他なかった。

 己自身も同じものである事に、無意識に気がついた所為だ。

028 ブラッド

「姐さん捕まえ次第、お前が決めればいい。旅団には空席がある。お前が望むなら、そこに座ればいい」

029 藍羅

「捜索を拒否する理由はないわね?」

 誰かに似て意地が悪い。レイジは溜め息混じりに、肩を落とした。

030 レイジ

「これで最後だぞ」

031 タイトルコール

(タイトルコール)

 GUNBLAZE the 3rd chapter

 GUNBLAZE ACT2 - Venomous Deride

 胸倉を掴み、力の限り壁に叩き付ける。反動で頭をぶつけて、ブラッドは顔を顰めた。

032 ブラッド

「いてて、いきなり何すんだよ。八つ当たるなら、ちったあ手加減しろよ」

 気に入らない苦笑の前に銃口を突き出し、レイジは嘆息した。

033 レイジ

「鋼鉄の意志、とは、お前のことか。俺がまだ培養槽の中にいた頃、アルフロストに向けられた通称だ」

034 ブラッド

「待て待て、その銃を下ろせ。その通称はアルフのだろ? 俺じゃない。大体、アルフはテナウ=ハサハの生まれだ。俺はレブナンス。そこからして違うだろ?」

 茶化した様子で答えるブラッドに、もう一度怒りを傾ける。鎌をかけたつもりだが、上手い具合に掛からなかった事に落胆した。

 渋々銃を下ろし、手を離す。

035 レイジ

「正直に答えろ、お前がアルフロストか。外見、年齢、共通点が多い」

036 ブラッド

「……違う。俺じゃあない」

037 レイジ

「じゃあ、封鎖されていたはずの研究棟にいた理由は。そこにアルフロストがいるのか。お前とアルフロストの繋がりは何だ」

038 ブラッド

「なんでそんなにアイツに執着する?」

039 レイジ

「答えろ!」

040 ブラッド

「アルフロストはな、馬鹿だったんだよ。騙されてるとも知らずに従ってたんだ。事実を知った時にスゲェ暴れてな、そいつを抑えるために俺がいる。何でそんな事に興味があるンだ?」

 ならば。半分安堵したようで、半分気落ちした。

 レイジは内心期待していたのかもしれなかった。目の前の男がアルフロスト本人であれば良かったのに、などと。腹の底で蠢くどす黒い感覚は、例えるのであれば、得体の知れない恐怖だ。

041 レイジ

「最近、寝れば夢に見る。記憶に纏わりついて離れない。その正体が知りたい」

042 ブラッド

「……そうか。運が良ければ、会えるかもな……残念だな。俺は結構今みたいにさ、のんびりしてるのも悪くないと思ってたンだけどよ――戻って、仕事すんぞ」

 惜しがる様子で呟く旅団長の背を見送り、レイジは強く拳を握った。苦々しく吐き捨てる。

043 レイジ

「また振り出しだ」

044 ヌクリア

「ダンチョダンチョ、ヘイズがね、いってたの。おとなになったらみみとしっぽ、なくなっちゃうんだって。ヌクこのままがいいな」

 二本の尻尾を振りながら幼い蛮猫の子供が裾にしがみ付く。その頭を撫で回しながら、ブラッドは手元の書類を捲った。

045 ブラッド

「ヌクはそのままがいいな。俺としても肉球がなくなるのは惜しい」

046 ヌクリア

「ヌクもこのままがいいな。ダンチョ、いまのままがいいな」

047 ブラッド

「俺があ? 俺はずっと今のままだぞヌク。おかしな事言うな、お前」

048 ヌクリア

「でもダンチョさいきん……ううん、なんでもない。ヌク、リキのおてつだい、してくる」

 言葉に詰まって頭を左右に振る。そのまま理紀の側へ駆け寄って、ヌクリアは会議室へと姿を消した。奇妙な違和感を感じながらも言い出せないでいる様子は、まるで近場で段ボールの山を切り崩しているフローズを見ているようだ。

 レイジは居場所のなさを感じて、仕方なくその内の一つに手を伸ばした。

049 フローズ

「子供の勘は鋭いって言いますからね。あの、手伝ってもらえるなら……それ書庫までお願い、できますか」

050 レイジ

「随分重たい物を運んでるんだな。あの連中にやらせればいい」

051 フローズ

「いいんです。散らかすのが得意な連中ですから、下手に手を出させたら悪化するだけです。第一、片付けを溜め込む方が悪いんです――レイジ、さん」

 呼び慣れない呼称に反応し、思わず抱えた段ボールを落としそうになる。

052 レイジ

「……何だ。アルフロストの話なら、持ち掛けるだけ無駄だと思う。俺にも分からない事の方が多い」

053 フローズ

「いえ、違和感の原因が分かったような気がするんです。団長が、最近少し余所余所しくなってませんか? 調子がおかしいというか……」

054 レイジ

「答えかねる。元を知らない」

055 フローズ

「鬱陶しいのは元々ですけど、絡んでくる時も一定以上は踏み込んでこない人なんです。最近はもっとこう、なんていうんだろう……自分から避けてるような気がして」

 曖昧な言葉を懸命に置換えながら、途中で口を噤んだ。それ以上何を言えというのか。言いたい事は理解したが、それ以上言葉が浮かばず沈黙だけが過ぎようとした。

056 レイジ

「よく、分からないな。本人に言わせてみれば、アルフロストとは別人らしい。懐かしい気はするが」

057 理紀

「あっ、レイジさん団服ー! 真っ白じゃないッスかー、髪も白くて綺麗だから丁度いいですね」

 理紀がひょいと顔を覗かせ、表情を明るくする。場を和ませるのが彼女の特技のようだ。髪、の一言にぎくりと肩を震わせた。

058 ヌクリア

「レイジ、ゆきだるまみたい」

059 レイジ

「……変な奴だな、お前」

060 理紀

「僕ッスか? 何かおかしいとこあります?」

061 レイジ

「この色を見て、大抵の奴は驚く」

062 理紀

「いい色だと思いますけど……駄目なんですか?」

063 レイジ

「……いや、なんでもない。変な奴だ」

064 理紀

「そうそう、ちょっと目を離した隙に団長がどっか行っちゃって、探してるんスよー。なんか僕避けられてるしなあ」

065 フローズ

「それは同族嫌悪ってやつじゃないか? 尤も、最近の様子だとそれに限った事じゃないかもしれないけど」

066 理紀

「ああそっか、同族嫌悪かあ。あるかもなあ、団長のことだから」

 理紀は少し残念そうに答えて、苦笑する。

067 ヌクリア

「どーぞくけんお、ってなあに?」

068 フローズ

「似た者同士、似すぎてて苦手って事ですよ」

069 理紀

「団長もだけど、リブレさんも見かけないなあ。クイーヴ先輩が怒ってたし」

070 フローズ

「……理紀、なんであいつに先輩なんてつけてるんだ?」

071 ヘイズ

「レイジ、ちょっと手伝え。薄ら馬鹿が消えやがった」

072 理紀

「あ、ヘイズさんは残ってたッスねえ」

 不意に呼ばれて背後を振り返る。頭に雪を乗せた大男が傍らに立っていた。外を一通り回ってきたような様子で、不機嫌を露わにする。

073 レイジ

「またサボリじゃないのか」

074 ヘイズ

「だろうな。リブレが場所だけメモ寄越してきたんだが、来いってよ」

075 レイジ

「なんで俺がそんな事を」

076 ヘイズ

「さあな。アイツの考える事は俺には分からん。酒場か……厄介だな」

 いつになく投げ遣りだ。一人隅にぽつんと取り残された少年が虚しく呟いた。

077 クイーヴ

「僕だけのけ者か」

 レブナンス中央広場から少し奥まった通りへ入ると、小さな居酒屋が静かに佇んでいる。昼の客層の少ない時間に尋ねてきたのは、派手な金髪の大男だった。

078 ブラッド

「ようヴィヴィ。久しぶりのところ悪いが、ちょっと話あるんだ。いいか?」

079 ヴィヴィ

「なんだい。うちは酒しか出せないよ。軍人さんが私服でお忍びとは、いいご身分だね」

 ぶっきらぼうに答えて主人はボトルを置いた。不機嫌さが見て取れた。

080 ブラッド

「まあそう言うなって。分かった分かった、客だ、客としてきた」

081 リブレ

「団長、仕事中に人目を忍んで逢瀬とは、やらかしてくれますね」

082 ブラッド

「うお! 何でお前ここにいんだ!?」

083 リブレ

「"何で"は僕の台詞ですよ、一人で来るなんて。ただでさえ悪名高い大佐が城下で噂になったら、流石に姫様が可哀想でしょう?」

084 ブラッド

「笑顔で言うな怖いから」

085 ヴィヴィ

「旅団の団服……アンタそこの馬鹿の部下の子かい? 丁度良い、連れ帰って頂戴よ。この薄らトンカチ、昔から厄介ごとばっかり持ち込むんだよ」

086 リブレ

「ええ、最初からそうするつもりで来たんですけど」

 ブラッドを指差して同情を誘うヴァージニアの半ば笑いながらの訴えに応え、リブレは苦笑した。時間が時間だけに他の客といえば、喫茶代わりにしている人間がぽつぽつと見られる程度だ。

 カウンターに身を乗り出してブラッドは尋ねる。

087 ブラッド

「ここ最近、この辺で女医を見かけなかったか? 赤髪にオッドアイ、背少し高めの」

088 ヴィヴィ

「お尋ね者? そんな人は知らないけど。ちょっとブラッド、冷やかしに来ただけなら営業妨害で上に報告するよ」

089 リブレ

「あ、マスター、一杯下さい」

090 ブラッド

「ヴィヴィ、そりゃないだろ。っておいリブレ、仕事中とか言ったのお前だろ」

 呆れた様子で肩を竦める。しかしヴァージニアが嘘をついている事は、ブラッドも気がついている。リブレに何か考えがあるのか、それとも何も考えなしの行動なのか読めず、諦めて座り直した。

091 ヘイズ

「アイツら、バックレる度に手の込んだ真似しやがって」

092 レイジ

「先が思いやられるな」

 広場の喧騒から距離を取り、店の前にホバーを構えてレイジは団服のフードを被った。窓から伺える店内の様子は静かではあるが、カウンターの様子は和やかだ。

093 ヘイズ

「すっかりデキ上がってるんじゃねえか? 大丈夫か? こんな街中で、殲滅だけはするなよ」

094 レイジ

「期待しない方が良さそうだ」

095 ヘイズ

「あ、おい、ミイラ取りがミイラにはなるなよ」

096 レイジ

「……それも期待するな」

 ブラッドに無理矢理巻き込まれれば、後どうなるかなど知れた事ではない。気が重いが他に人がいない。取っ手に手を置くと、隔離棟のそれより遥かに軽い扉は簡単に開いた。

 奥の方から聞こえる談笑にレイジは脱力感を感じた。

097 リブレ

「団長も、随分フローズに好かれたものですね。最近理紀よりも追い回されてませんか」

098 ブラッド

「ありゃ俺をいじるのだけが生き甲斐なんだよ。別の趣味を持ってくれると、俺としても嬉しいんだけど」

099 レイジ

「おい、お前ら。おい……こういう事になってるだろうとは思ったが」

100 リブレ

「やあ、レイジ君。奇遇ですね、こんなところで」

101 レイジ

「奇遇じゃない。くそ、離せ」

 腕を引かれ、席へと無理矢理座らされる。ヘイズが嫌がって役を押し付けた理由を、なんとなく理解した。

102 ブラッド

「そんな嫌そうな顔すんなよ、傷付くだろ」

103 レイジ

「誰の所為だと思ってる、何しにここに来た」

104 ヴィヴィ

「あ、あらあらあら、キミ、死刑執行の! まあ座って座って」

105 レイジ

「人違いだ。そこの二人を連れて帰ってもいいか」

106 ブラッド

「なあリブレ君よー。レイジ君が俺の名前だけ覚えてくれないのは、俺への当て付けだと思うんだけど。これどう思いますー」

107 リブレ

「団長は代名詞沢山持ってますからね。もうここまできたらいっその事、誰かに『ご主人様』って言わせて見ればいいじゃないですか。きっといい見ものに」

 完全に面白がっている様子に辟易し、吐き捨てる。言葉も通じているのかそうでないのか、敢えて無視されているのか最早区別がつかない。

108 レイジ

「……酔っ払いどもを公安の前に突き出す、話は後だ」

109 リブレ

「やだなあ、酔ってませんてば」

110 ブラッド

「おっし、面白い光景見せて貰ったし、真面目に仕事しますかー。ヴィヴィ、正直な事言っとけよ」

 立ち上がりながら声をかけるブラッドに、女主人は相変わらず苦い表情を浮かべていた。手にしていた皿を置いて、毅然として答える。

111 ヴィヴィ

「知らないね。兄さん方の期待には応えられない」

112 ブラッド

「目撃情報が出てンだってよ、リブレの情報なら確かだ。別に処分しようって事じゃねンだよ」

113 ヴィヴィ

「……分かったよ。正確な事を言えば、数日前にここを出てから先は私は何も知らない。どこへ行ったのかも聞かされてない」

 ヴァージニアは溜め息交じりに肩を竦めて見せた。それが偽りのない言葉だと伺って、流石のブラッドも腕を組んだ。

114 ブラッド

「だってよ、リブレ。お前の情報網もここまでか、ここから先は地道に探すかね」

115 リブレ

「まあ仕方ないですね。――レイジ君、団長から目を離さないで下さい。様子が少しおかしい気がします。あとこれを。探す対象の情報が全部入ってます」

 肩を掴まれ振り返れば、小声の忠告が響いた。リブレも既に気が付いているとすれば、他に知らない人間がどれくらいいるのだろうか。渡されたディスクのスクリーンを展開し、情報を探った。

116 レイジ

「サージェ・クライナ……この近辺にいるのか」

117 ヴィヴィ

「次来る時は、客として来て欲しいもんだね。迷惑もいいところだよ」

118 ブラッド

「悪ィ悪ィ、また今度な。次来る時はそうするつもりだって、あんま怒んなよ」

119 ヴィヴィ

「信用していいのかねえ、その言葉。破壊魔のあだ名にしたって、伊達じゃないんでしょう?」

120 ブラッド

「呼ばれたくて呼ばれてるわけでもないんだけどな。とにかく、見かけたら連絡くれ。サージェ・クライナって女だ」

 無言で苦笑するヴァージニアに告げる。先に外へ出れば、ヘイズが仏頂面で待ち構えていた。

121 ヘイズ

「呑まれなかったかレイジ、そこの馬鹿二人相手によくやった。お前ら、これに関する弁解は」

122 リブレ

「人探しですよー、結果は惨敗でしたけど。丁度良いんで、僕とヘイズで周辺の聞き込みしますか。レイジ君は団長の指示に従って下さい」

123 ヘイズ

「兵舎の方はどうするんだ、クイーヴ一人じゃ心許ないぞ。戻ったら余計散らかってたなんて事になったら、誰が後始末するんだ」

124 レイジ

「アイツ一人でなんとかするだろう」

125 リブレ

「散らかす前提なんですね……それじゃあ、先に失礼。くれぐれも気をつけて」

 手を振るリブレらを見送って、残されたレイジは店の方へ向き直った。一対一の重圧が襲う。旅団員が揃いも揃っていう何かが、万が一起こらないとも限らない。

 暴力沙汰では、相手の方に分がある。

126 ブラッド

「待たせたなーレイジ、姐さん探しといくかー」

127 レイジ

「……お前、誰だ」

128 ブラッド

「変な事聞くんだな、どういうこった。俺は俺だろ?」

 頭上に疑問符を浮かべながら答えるブラッドの様子は素っ気無い。

129 レイジ

「俺が知るブラッド・バーン・ブレイズは、褐色の目をしていた。今のお前の目は緑だ。そいつの殻に入ってるお前は、何者だ」

130 ブラッド

「……は、余計な事に気付きやがって。やっぱアイツの『振り』は、難しいや」

 緑目のブラッドは、凶悪な笑みを浮かべて黒いカードを手に取った。

131 クイーヴ

「フローズ、どこに行くんだ。お前までサボる気か?」

 半ば不貞腐れた様子で問うクイーヴに、フローズは落ち着かない様子で答える。

132 フローズ

「埋め合わせは後でする。ちょっと出てくる、やな予感がするんだ」

133 クイーヴ

「……どいつもこいつも」