GUNBLAZE

ACT01 BIRTH CONTROL [ blaze_01 ]
No. キャラ 台詞、状況
001 藍羅

「レイジ、ちょっと来なさい。話があるの――って何よその嫌そうな顔は。そんな顔しなくても、前みたいな大変な話じゃないわよ」

002 レイジ

「信用していいのか」

003 クイーヴ

「あれ、陛下……こんなところで一人でいたらまた煩い奴が」

 突然射撃訓練場に入ってきた藍羅を一瞥し、クイーヴは首を傾げる。いつもなら後ろをうろついているはずの猫がいない事に気がつき、口にした。

004 藍羅

「旅団の皆まで陛下はやめて頂戴、落ち着かないわ。ところでブラッドは?」

005 クイーヴ

「さっき僕の銃奪って一発撃って行った後、どっか消えたまま。気紛れで適当に撃ったのがど真ん中だったりすると、頭に来るな」

006 藍羅

「なに、命中だったの? ああホントだわ、この結果なら相当優秀な狙撃手になれるわよ。何で実践の時に限って外すのかしら」

007 レイジ

「死刑執行の時に的外して、かなり痛い思いをさせられたんだが」

008 藍羅

「……ある意味器用よね。まあいいわ。レイジ、アンタの出生の話よ、知りたかったんでしょ?」

 返答に戸惑って口を噤むと、背後からクイーヴが銃弾を詰めつつ呟くのが聞こえた。

009 クイーヴ

「行ってくれば? わざわざアンタが僕のお守りなんかしてなくても、適当に言い訳考えておく」

010 レイジ

「ヘイズにどやされても俺は知らないぞ」

011 クイーヴ

「余計なお世話だ。第一お前いるだけで、何も教えちゃくれないじゃないか!」

012 藍羅

「じゃあちょっと一時間程、番犬借りるわねー」

013 タイトルコール

(タイトルコール)

 GUNBLAZE the 3rd chapter

 GUNBLAZE ACT1 - BIRTH CONTROL

 暗い地下研究棟の廊下を見て、レイジは嘆息する。かつての栄光は既に見られず、埃と蜘蛛の巣に埋もれた薬品棚は使われなくなって久しい。

014 レイジ

「……随分寂れたものだな、人がいなければこうまで質素に見えるのか」

015 藍羅

「本当は立入禁止なんだけど、アンタだから特別ね。使う人間がいなくなってからは廃屋よ。にしても、鍵が開いてるなんて……」

016 レイジ

「見ていてあまり気持ちの良い物でもないな。護衛つけなくていいのか、お前」

017 藍羅

「ジャスカじゃ心許ないし、隔離棟の近くじゃすぐに旅団が出て来れるもの。ああそうそう。コートのさ、フード、いる? 頭隠すのに。最近あまり気にしなくなったみたいだけど、その白い髪」

018 レイジ

「……説明を要求する」

019 藍羅

「アンタの復讐って言う目的は果たしたし、今度はあたしがアンタとの約束守る番だからよ」

020 レイジ

「まともな生活環境と戸籍、か」

 死刑執行後は旅団の隔離棟の会議室に居座っている。いまいち理解できずに返事に困惑した。そこへ破裂音が割って入る。

021 藍羅

「なになに、何の音?」

022 レイジ

「静かに、誰かいる」

藍羅が叫ばなかったのは幸いだが、様子を見ようと扉を覗くと、そこには見慣れた影がちらついた。

023 アルフロスト

「懐かしい、何もかもが懐かしいな。……なにイラついてんだよ、お前らしくもない。今までの仕返しさ、怒る事じゃないだろ」

024 ブラッド

「ふざけんな、戻れ。今すぐだ。お前が人目に触れたらどうなると思ってんだ」

025 アルフロスト

「偉そうな口を利くなよ、上っ面だけの男が。アイツに挨拶してやろうと思ってな……俺をこんな目に遭わせてくれた、アイツに」

026 ブラッド

「支配権を俺に返せ」

027 アルフロスト

「ヤダよ。お前、邪魔だよ。しかしまあ。建物丸々一つ、記憶そのまま残ってるたァな」

 足早に研究棟の廊下を進み、最奥の部屋を目指す。ブラッドは慌ててその意識を追った。

028 ブラッド

「おい、アルフロスト!」

029 アルフロスト

「造られた頃からすげー綺麗でさ、いいな……俺もあれくらい綺麗に造って貰えたなら、まだ諦めがついたかもしれない」

030 ブラッド

「止まれよ、アルフロスト。アイツはもうここにはいねェよ」

 反射的に開かれた扉の向こうに、荒んだ空間が広がる。電球が割れ、手術台は剥げ、薬品棚のガラスは割れ、中の薬瓶も無惨に散らばっていた。

031 アルフロスト

「足の踏み場もない……この有り様は……」

032 ブラッド

「だから俺は忠告したじゃねェかよ、馬鹿」

033 アルフロスト

「――どこへやった、あの女、あの魔人! お前がやったのか、ブラッド!」

034 ブラッド

「知らねェよ。アイツが勝手に逃亡した、そんだけだろ」

 憎々しげに吐き捨て、アルフロストは割れたガラスの破片を覗き込んだ。己の姿が映ることを確認し、忌々しげに呟く。

035 アルフロスト

「この髪もも全部俺のものだ、俺の物だからな……渡すものか、全部取り返してくれる」

036 ブラッド

「できるンならやりゃいいだろ、俺は止めない。ただ、お前を野放しにするワケにはいかない」

037 アルフロスト

「フローズはどこだ、いるんだろお前の近くにさ」

038 ブラッド

「お前には会わせてやれない」

039 アルフロスト

「……煩いな、お前が皆奪って行ったんだ。俺を返せよ。俺にはお前が奪った物全部、取り返す権利があるだろう!?」

 全身を金縛りのようなものが襲い、ブラッドは硬直した。薬品棚のガラスが砕ける音がし、驚いて振り返る。アルフロストは急に影を顰め、ブラッドの視界から姿を消した。

 不思議な現象を目の前で見た気がして、レイジは当惑した。苦い表情を浮かべたまま立ち尽くす。

040 レイジ

「なんだ、お前か。そこに誰かいるのか」

041 ブラッド

「レイジ? レイジか? 悪ィ、助かった」

 暗がりで一つ一つ確認するように問い、ブラッドは肩を落とした。

 状況が理解できないレイジは頭上に疑問符を浮かべたまま、溜め息交じりに促す事しかできない。硝煙を吹く銃を下ろしながら外を指す。

042 レイジ

「顔色が悪い、戻れ」

043 ブラッド

「――ああ、そっか。明るいところ苦手なんだったんだっけなレイジ、道理で夜目が利くわけだ」

044 レイジ

「褐色だな……俺の気の所為か」

045 ブラッド

「なにがだ?」

046 レイジ

「こっちの話だ、お前は関係ない」

047 ブラッド

「なあ、一つ変な事を聞いていいか」

048 レイジ

「内容にもよる。ふざけた内容ならその場で撃ち殺す。いいな?」

 鮮血の瞳を伏せながら吐き捨てるレイジに苦笑し、ブラッドは問う。踵を返し、レイジは薄暗い廊下に立った。

049 ブラッド

「いやなに、知りたいだけだ。俺はここで何をしていた?」

050 レイジ

「一人でここに来て、そこらを物色してたんじゃないのか」

051 ブラッド

「そっか、そうだよな、気にしないでくれ。あと一つ、お前だから言っとくよ。俺は……俺が怖い」

052 レイジ

「……そうか」

 曖昧な言葉を返すしかできず、出口に向かって歩き出す。黒コートを見送ったブラッドは、去り際に見せたレイジの無表情に複雑な感情が織り交ざっている事を悟り、奇妙な感覚を覚えた。

053 アルフロスト

「っはははは、いい気味だ! 勘付かれたかもな。今度は俺が、お前から奪い返す番だ」

054 ブラッド

「うるせえ」

055 藍羅

「上官は殺される、階級が繰り上がる、次は自分の番かと怯える。そんな時代はもう終わり。でもねぇー……あーやなもんだわ」

056 ジャスカ

「姫様、どこに行ってたんですか? 心配して追っかける老臣達振り切っちゃって」

057 藍羅

「いいのよ、ジジども皆無駄に元気なんだから。まさか父様が国政から遠ざけるために、老臣を地方に追いやってたとはねえ……」

058 ジャスカ

「でもおかげで建て直しも楽になったじゃないですか。知恵って大事でしょ? 中将だってまだ処分保留だし」

059 藍羅

「そうね、まあそうだわよ。あたしはね、本当は怖いのよ。もしかしたら前のままの方が良かったんじゃなかったのか、って」

 書類をバサバサと積み上げながら、藍羅は溜め息をつく。邪魔にならない位置に並々と紅茶を注いだカップを置き、ジャスカは苦笑した。

060 ジャスカ

「まさか姫様、本当は最初から全部仕組まれてたんじゃないかーなんて思ってるんじゃないでしょうね」

061 藍羅

「生活だって最低限は保証してくれていたんだもの。クーデターにしたって、他の団を出さなかったのは何故? 父上は最初から、殺されるつもりでいたんじゃないかしら」

062 ジャスカ

「憶測はいくらでもできます。本当の事は閣下にしか分からない。姫様はもう皇帝ですよ、なるようにしかならないんじゃないですか?」

 ジャスカの珍しく淡々とした物言いに、藍羅は目を丸くした。直後、にいと笑んだジャスカに溜め息をつき、肩を竦める。

063 藍羅

「アンタに慰められるようじゃあたしも終わりね」

064 ジャスカ

「ちょ、今なにか物凄い酷い事聞いた気がするんですけど。僕に何を期待して拾ったんですか姫様……」

065 藍羅

「何も期待してないわよ。拾った時に、軍に置いたらすぐに捨てられるんじゃないかと思って従者にしただけよ」

066 ジャスカ

「そ、そんな~、僕が散々悩んだ時間を返してください~」

067 藍羅

「知らないわよそんなの。そうそう、リブレかレイジにこれ渡しておいて頂戴」

068 ジャスカ

「なんですかこれ~」

 半ば泣きそうな声で少年は応じる。渡されたメモには彼の読めない文字が記されている。

069 藍羅

「彼らが欲しがってる情報よ。ああ、あとこれもお願いね。これはレイジに。嫌そうな顔されたらブラッドにでも縋りなさい」

070 ジャスカ

「旅団の白コート……姫様、まさかレイジのやつ入団させる気じゃないでしょうね」

071 藍羅

「――今更何言ってんの? 事後承諾に決まってるじゃない」

072 ジャスカ

「やっぱり本人が嫌がっても無理矢理入れる気だ――!」

 有無を言わせぬ主人の言動に、使いっ走りの蛮猫の少年はここぞとばかりに悲鳴を上げた。

073 レイジ

「アルフロスト・メルティ。どうしようもなく勝手な奴だった。必死で生にしがみ付いて、消えていった事を覚えている」

074 フローズ

「生死も分からない、と」

075 レイジ

「それが分かればここまでこじれない――けど」

 寄りかかると軋むソファーの周囲に紙を散らしたまま、レイジは背を預ける。フローズはその内の一つを手に取り、当惑しながら呟いた。

076 フローズ

「兄は金髪碧眼、団長は金髪だけど目は褐色。言動も姿も別人なのに、イメージがダブるのは何故」

077 レイジ

「ブラッドがアルフロストに関して何らかの情報を握っているのは確かだ。……情報をまとめたところで、何の意味も成さないな」

078 フローズ

「団長に話す気があるのなら、私がここに来てからの3年の間に喋ってるでしょう。彼は何一つ喋りませんでしたよ」

079 レイジ

「――馬鹿か、俺は。結局何も分からないままだ」

 考えて分からない事を、今無理に理解する必要はない。それは思考レベルでは分かっている。手にしていた紙を放り投げ、辺りを見回した。資料は積み上げられたまま片付けられる様子はない。

 バランスを崩して倒れると派手に音を立てた。不意に窓の外に視線を傾けると、無機質な白がゆっくりと流れ落ちている。

080 フローズ

「また雪だ――寝るんですか? 会議室は冷えますよ……ってもう遅かったか、毛布持って来よう……」

 フローズの呆れにも似た一言を耳にしながら、睡魔に身を委ねた。

081 ブラッド

「なー、いんじゃね? ここで寝てるのが悪いんだろー。大体会議室に住み着いてるんだぜ? 邪魔だろうよ」

082 クイーヴ

「知らないぞ、どうなっても。せめて水性にした方が身のためだと思うんだけど」

083 ブラッド

「いいんだよ油性で、こういうのは教訓だろ。よーッし俺様に任せておけへタレども。なんて書こうかなー」

 油性マジック片手に悪戯を考える。クイーヴは素知らぬ顔でそっぽを向いた。気が疲れる前に逃げるが勝ちだ。

 頭上から降る声にレイジは目を覚ました。最近はこんな起こされ方ばかりだなどとも思ったが、警戒ばかりで眠れぬ数日の野宿を考えれば随分マシになったものだ。すぐ近くに気配を感じ、嫌々目を開く。

084 レイジ

「……煩い目覚ましだ、もう朝か」

085 ブラッド

「あ……おおお、オハヨウゴザイマス」

086 レイジ

「貴様、今後ろ手に何を隠した。逃げるな、洗いざらい吐け」

087 ブラッド

「うおっ、ななな何をする! あでっ! 蹴るなコラ、お前これスキンシップ……おいレイジ、お前最近ちょっとツンデレだぞ!」

 会議室の扉の方へ蹴り飛ばし一気に距離を縮める。扉がタイミング良く開かれ、格納庫の方へ大柄な図体が転がった。その隙に容赦なく引き金を引く。

088 クイーヴ

「あーあ、駄目だこりゃ。これ以上この建物をボロにする前にやめとけよ、レイジ」

089 リブレ

「ドア開けたら団長が転がり出てくるなんて、不吉ですよね。ああ、なるほど、会議室の番人を怒らせましたね団長」

090 ブラッド

「あぶっ、レイジ、やめろコラ! 分かった謝る、俺が悪かったァアア! うわお前それ油性ペン! やめろォオオ!」

 慌てて押し返そうとする背に圧し掛かり、奪った油性ペンのキャップを外す。顔面蒼白ながら叫ぶ声が格納庫に木霊した。

 足下でぐたりと力無く絶えた男を放置し、会議室へ戻る。片付かない書類の上に更に紙を積み上げて、リブレは微笑しながら見守っていた。始終を見ていたクイーヴからすれば、その結果は苦笑する他なかった。

091 クイーヴ

「だから知らないぞって言ったのに」

092 リブレ

「まあ普段悪戯してばっかりだから良い薬じゃないですか? なんて書いたんです?」

093 レイジ

「ノーコン」

094 クイーヴ

「色んな意味で酷いなそれ。そうだ、さっきから外でヘタレがうろうろしてるんだけど」

095 リブレ

「ジャスカ君ですか? 入れてあげたらいいじゃないですか、外で凍えられても厄介ですし。彼はまず用事がなきゃこの建物に近寄りませんよ」

096 ブラッド

「いいよ俺が行くわ。あーチクショー。ヒデェー、落ちねェよコレ」

097 レイジ

「油性だからな」

098 クイーヴ

「油性だったからな」

099 ブラッド

「大体俺のは未遂よ未遂。今度からレイジに悪戯するのに手の込んだ真似はやめようマジで……」

100 リブレ

「一つ反省したところで、仕事始めますよ。ええとまず、姫が奮発して下さいまして。器材が一つ入るので片付けておけとの事です」

101 ブラッド

「どこから出ンだよその金。復興で予算食われてンだろ?」

102 フローズ

「当分給料はそのままって事じゃないですか、単純に」

103 ブラッド

「やっぱそういうオチなのか……まあしゃぁないな、姫さんはそういう奴だかンな。それで全体が良くなりゃそれでいいわ、ははは……」

 げんなりして机に突っ伏す。それには敢えて誰も口を挟まなかった。

104 リブレ

「ここがあんまり酷いんで、折角だから片付けようかと思ってるんですけど。器材の運び込みはヘイズとクイーヴに任せるとして、異論は?」

105 ブラッド

「ある、人探し。姫さんから依頼が来たんだがリブレ、あとで検索かけてくれ」

106 クイーヴ

「さっきの猫から、何か連絡でも入ったのか?」

107 ブラッド

「まあそんなもんだな、話があるからレイジを連れて来いと」

 予想外の言葉に驚いた。まず最初に浮かぶのは研究棟のブラッドの奇行だ。連れて来い、という単語が引っかかったままレイジは黙り込む。

108 リブレ

「じゃあレイジ君の方片付いたら、人探しに協力して貰いましょうか」

109 レイジ

「断る。俺は団員じゃない」

110 ブラッド

「残念、お前は既に旅団員としてカウントされてる。さっきジャス坊から団服を預かってきた。ホレ、お前のだ」

111 レイジ

「ふざけるな、ここに残るつもりはない」

112 クイーヴ

「その割に居付いてるみたいだけど」

113 フローズ

「それはちょっと違うぞクイーヴ。クーデターの時にしたはずの取引の半分が、まだ片付いてないって言うんだ。だからだよ」

 曖昧なフォローに肩を竦め、押し付けられたコートを睨む。白い縁取りの白灰の団服だった。他団と違い、これに袖を通してしまえば彼らと同じ悪魔に数えられる事になる。

 レイジは疲弊した声音で呟いた。

114 レイジ

「どいつもこいつも余計な真似を……」

115 ヘイズ

「いいんじゃねーか? もう追い回される事はねーんだからよ、少し落ち着いてもいいだろ」

116 クイーヴ

「僕らだって商団に戻ってもいいんだろうけど、スヴェルに蹴り出されそうだしな」

117 フローズ

「戻ったところで商才がないから邪魔になるだけだよ」

118 リブレ

「皆似たようなもんでしょうね、僕ももう師団に戻る気ありませんし。さて、と。いやになる前にやっちゃいますか」

 全員身勝手だ。と今更ながら思う。その場に残ったヘイズが興味深そうにこちらを向いているのが気に食わない。

119 ヘイズ

「正直、他に行くアテがないってのが本音だけどな」

120 レイジ

「耳、もういいんじゃないのか、隠さなくても」

121 ヘイズ

「ああ、なんだ、気がついてたのか。勘いいな。チビ助みたいな子供ならともかく、年取るごとにほとんど区別がつかなくなるんだぞ」

122 レイジ

「蛮猫に対する圧政もなくなっただろう、まだ気にしてるのか」

123 ヘイズ

「お前の頭と同じだよ。恐怖心ってーのは、ある日突然なくなるもんじゃねえだろ? トラウマもあるしな。染み付いた癖は暫く取れねえよ」

 己の髪色を指摘され、納得する。いくら旅団員が気にしないからといって他人がそうであるとは限らない。唐突に思い出し、ふと我に返った。

124 レイジ

「……なるほどな。最近はあまり気にならなかったが……この環境に慣れすぎたかもしれないな」

125 ヘイズ

「まあ、気にすんな。さって仕事すっかァ、どこからやるか」

 膝を叩き、ヘイズが立ち上がる。

 腕を組み、遠巻きに話を聞いていたブラッドが間を見ながら声をかける。

126 ブラッド

「おーいレイジ、そろそろいいか?」

127 レイジ

「……あの女は何をさせる気なんだ」

128 ブラッド

「俺に聞くなよ、姫さんは結構突発的な事やらかすかンな。わざわざジャス坊寄越したって事は、直に話したい事でもあんだろ」

129 レイジ

「そうだな」

 己にも確認しなければいけない事があると思い出し、レイジは頷いた。